忘れられた君

笹久保伸

忘れられた君の影は
忘れられた君の帽子の中にあった
忘れられた君の傘は
忘れられた君のズボンの中にあった
忘れられた君の夜明けは
忘れられた君の靴下の中にあった
忘れられた君の情熱は
忘れられた君のパンツの中にあった
忘れられた君の友人は
忘れられた君の響きの中にあった
忘れられた君の兄弟達は
忘れられた君の夕方の中にあった
忘れられた君の朝日は
忘れられた君の孤独の中にあった
忘れられた君の夜は
忘れられた君の骨の中にあった
忘れられた君の血は
忘れられた君の身体の中にあった