霧と生きる人びと

スラチャイ・ジャンティマトン

庄司和子 訳

白い霧がたちこめる早朝
大柄の雄鶏が時を告げると
シャモ(軍鶏)も競って応える
タイ(泰)族の目覚めは早い
シャンステートの夜明け
近づいても誰も見えはしない
どのように暮らしているのか
どのように食べているのか
タイ族の最後の砦
誰もが力を合わせて
護っている

朝飯は霧と食べる
手を伸ばしてもあるのは深い深い霧
霧よ 幾年を経ても
天と地と人を包んでいる

涙が流れ続けた
哀しみは
誰も望まない
誰も欲しない
こころはずっと闘ってきた
タイ族は誰もひるまない

霧と生きる人びと
霧の中にも火はある
こころの中に消えやらぬ火が
シャンステートの人びとの主権

兄弟たちよ、歌をうたおう
みんなでうたえば力が生まれる
生命は希望を失わない
太陽がそうであるように

日の光よ わたしたちを照らして
哀しみと血と涙とを
溶かしてほしい
タイ族よ闘おうではないか
大地、大空、そして呼吸
タイ族よ闘おうではないか
大地と大空がタイ族のものとなるように

注:シャンステート=ビルマのシャン州のこと。泰族(タイヤイ族)の居住地