春はいずこ?

大野晋

今年は例年になく寒いらしく、梅の花が咲いたという便りもまだ耳にしない。まあ、身近なところで季節が感じられた庭の木々が、昨年の家の建て替えでなくなったままだから、早春の紅梅も、そろそろ咲き始める白梅も、居ながらにして眺めることはできなくなっている。そうした意味では、春を感じにくくなっているだけなのかもしれない。信越の雪も今年は例年になく多いということなので、五月の連休には2年ぶりにカメラの機材を抱えて撮影三昧の旅に出かけてみるのもいいなあと思っている。

1月は都響こと東京都交響楽団は定期公演で日本と海外の現代音楽を取り上げる時期である。夏にサントリーホールなどが演奏機会を作っているとはいえ、なかなか、現代音楽を実演で聴く機会は少ない。そして、前例に漏れず、現代音楽を取り上げたコンサートの人の入りもとても少ない。しかし、観客の数と演奏の質が比例するはずもなく、少ない人数の演奏会は余裕のある会場で、ゆったりと音に浸れる滅多にない機会のように思えてならない。今年も北爪作品の音に浸り、杉山さんの指揮をした演奏で、ブーレーズをなんと数十年ぶりにきちんと聞くといった経験をした。ブーレーズの指揮した音源に触れる機会は多いが、ブーレーズの書いた作品を聞くという経験は滅多にない。

殺風景な庭に植えたパンジーは年末あれほど元気良かった葉を、このところの寒気で縮こんでしまっている。まだまだ、春の気配を感じることは難しいが、やってこない春もない。やがて春が来て、生命に満ちた姿を見せてくれるだろう。

ところで、年末に一本植えたエゴノキは果たしてこの春無事に芽吹くのか? おかしなところに興味のある今日この頃です。