オペラらしからぬオペラたちと地方のオケについて考えた

大野晋

金曜の夜、「影の反オペラ」に出かける。体調はすこぶる悪い。会場でダウンするのではないか? と心配だったがなんとか、最後までいることができた。前半は高橋さんのいつものパターン。ぼそぼそ、っと解説があって、ぽろぽろっとピアノが鳴る。今日は歌が付いているからいつもよりも華やかだ。

後半は一転して、アングラ劇団のオペラの雰囲気のする歌唱劇の様相。そもそも、あまりおどろおどろしいストーリーは得意ではなく、本も巻末を読んで安心してから本文を読み進める派の私にはとてもコワーいお話。まあ、初夏の一日には最適なんだろうけれど、やはり怖かった。

翌日はいろいろと用事を済ました後で、サントリーホールに。「売られた花嫁」のコンサート形式のオペラ鑑賞。こちらも純粋なオペラではないのだけれど、本場の歌手陣が歌い上げるさながら歌謡ショーの様相。これもまた、面白い。日本など、さほど、オペラを嗜もうという輩が多くないのだから、このような舞台装置をかけない形式のオペラ上演がむしろ合っているのかもしれないなどと思った。

さて、翌週は県立音楽堂で地元のオーケストラのコンサート。演奏はとてもよかったのだが、会場で行われていた署名活動(すぐに問題というよりも活動支援を減らさないでという事前活動)を見ながら、少し考えてしまう。

私の住んでいる横浜は少し変わっていて、とてもへそ曲がりのお国柄。東京と一緒にされるのを極度に嫌い、独自色をとても大事にする。そんな文化的な背景を考えると、オケの方にも問題は浮かんでくる。あなたたちの独自色ってなんですか? という問題。8つもオーケストラのある東京と同じプログラムで、似たようなレパートリーを披露していたらそれこそ、自分たちの居場所は確保できそうにない。これが、東京から離れた地域のオケなら、同じプログラムでも東京に出かけないで済むというメリットを感じてもらえるのだろうけれども、隣にいては有難味はまったくない。これって、自分たちで自らの首を絞めているパターンなのではないかいな? 署名活動の前に、自分探しの方が大切かも知れない。