音の遊び またはある夏の夜の夢 または遊び過ぎの懺悔

大野晋

興にいるとどうも度が過ぎるというか、のめり込みすぎるけがある。今年の夏はコンサートにのめり込んでいってしまった。面白いのだが、なぜか、しんどい日々。その短い記録である。

某月28日 東京芸術劇場
Y響でメシアン「われらが主 イエス・キリストの変容」を聴く。
メシアンはなかなかない演目。まあ、難しいと言えば難しいからか。なかなか面白かった。
しかし、このときには、この公演がこれから続く1ヶ月の序章だとは気がつかなかった。

某月9日 東京芸術劇場
F管が来日。指揮者はインバル。なんか暇だなあ、と公演日程を見ていたら当日券があったのでなんとなく聴きにいく。
どうやら、東京芸術劇場の開館?周年記念らしいのだが、空席が多い。時期が悪いと言うか、なんというか。芸術劇場の開館時にF管の演奏でこけら落としをしたそうだが、指揮者のインバルは来年から都響のポストが決まったばかり、すぐに12月に来日し、マーラーを2プログラム、年末のベートーヴェンの第9まで振っていく。あまり指揮者にプレミア性がないためか? まあ、オケも花がないといえば、花がない。そこがすごいと言えばいえないこともないのだろうが、ううむ。わざわざ外タレを呼ぶような公演だったかどうか? 12月の都響に期待しよう。しかし、インバル。しっかり、拍手に応えるフリをしてしっかり女性歌手の肩を抱いているあたりはさすが。やはり、女好きの噂は本当か?

某月10日 紀尾井ホール
きょうもぱらぱらと日程を見ていたら、ファジル・サイの来日公演を発見。明日、初めて紀尾井ホールに行く前に下見にしようと急遽、チケットを入手。
雨がしとしとと降っている中、上智大学の隣まで。
はじめてみる紀尾井ホールは中小規模のいいホール。ステージの真ん中にピアノ。
ファジル・サイは比較的弾き方などは無頓着に、ピアノを壊さんばかりに様々な音を出していく。まさに、音で遊んでいる感じ。音楽を聴いたというよりも、面白いパフォーマンスを見たなという感じがした。
帰りもまた雨。

某月11日 紀尾井ホール
きょうは高橋悠治を聴きにいく。
ホールに着くと、ピアノの調律中。なぜ調律が必要になっているのか、昨日のコンサートを見ているのでなんとなくおかしい。サイ、さては壊したな!
なぜ、高橋悠治なのか? というとさして理由はない。あえて理由をつければ、最近、2枚出たヴァイオリンソナタの伴奏がよかったとか、新譜が気に入ったとか、そんなところか。
コンサートは終始、ご本人の曲の紹介で進んでいく。特に休憩後のジェルジは付箋紙がびっちりついた楽譜を持って登場し、ひとつひとつ紹介しながら短いフレーズを弾いていく。まあ、紹介しないとわからないが、紹介されても短すぎて聴き入る暇もない。そう、音の遊びと言った感じの曲たちだ。あ。だから、タイトルがヤーテーコク(遊び)なのか。
帰りながら、心の片隅で音たちが遊び続けている感じがしていた。

某月12日 横浜みなとみらいホール
ダグラス・リードのパイプオルガンコンサート。
なんのことはない。単にいつも見ているだけのパイプオルガンの音が聴いてみたかっただけ。バッハから現代音楽までバラエティに富んだ曲はなかなか聞き応え十分。ただし、さすがにコンサートも連荘になると疲れてきて、一部睡眠モードの入ろうとする。パイプオルガンを聴いているとそのまま天国に行きそうになる。スリル満点。ルーシーちゃん。ばんざい。(ルーシーはみなとみらいホールのオルガンの愛称)

某月13日 東京オペラシティ
Nフィルの定期公演。指揮は立ち姿がおちゃめな広上淳一。ハイドン、モーツァルトの交響曲とプロコフィエフのチェロコンをなぜ聴こうとと思ったのかはなぞ。チケットがあったので、義務的にホールに向かう。さすがに1週間、毎日は疲れが溜まる。面白いだけに困ったものだ。
演奏はかなり楽しめたし、広上の演歌っぽいジェスチャーも見えてかなり満足。
プロコフィエフを弾いた中国のチェリスト趙静の音はどこか二胡を思い起こすような音がした。
ははは。明日は土曜日。なぜか、会社は休みだがコンサートは出勤日。

某月14日 東京芸術劇場
都響の特別公演。芸術劇場シリーズでオール・ドヴォルザークをチェコの指揮者スワロスキーで聴く。
さすがにお国の音楽、手馴れた感じ。特に後半の交響曲7番は好きな曲だがなかなか演奏会にはかからない。とても満足したが、さすがに疲れた。しかし、F管をわざわざイギリスから呼ぶなら都響でいいのに。

某月17日 紀尾井ホール
久しぶりの紀尾井ホール。たしか、前回来たのは先週か?
パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルオーケストラのベートーヴェン。
紀尾井ホールの舞台にオーケストラが乗るか心配だったが、小編成のオーケストラなので乗ってしまった。しかも、ピアノコンチェルトをするのでピアノまで乗ってしまうところがなんといいますか。。。
はじめからノリノリのコンサート。まるでクラシックじゃないみたいですが、これもクラシック。コンサート後にサイン会でしっかりとサインを頂いて帰る。大満足。

某月20日 横浜みなとみらいホール
火曜日と同じく、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルオーケストラのベートーヴェン。本日は4番と7番。オーケストラだけ。
会場で来年は、パーヴォはフランクフルト放送響と来日するとの告知。あ。来日ではなく、来浜して、ブラームス全曲の演奏会だそうな。なぜか、横浜の客とは仲がいい。客が満席にならなくても、一緒に楽しんでいる感じがいいのだろう。今年、というか、最近ないようなクラシック好きと演奏家の楽しい音楽の時間を共有できた感じがした。やはり余韻も音楽。演奏中の無音の時間も音楽。
演奏後、観客で指揮者を拍手で呼び出しながらコミュニケーションを楽しんでいた。
来年、また、来よう。

某月25日 ミューザ川崎
きょうはT響。ミューザ川崎で行われるフェスタサマーミューザというイベントの開幕コンサート。
指揮はイタリア人のニコラ・ルイゾッティ。今、ヨーロッパで売り出し中のオペラ指揮者とのこと。とにかく、なにを振っても楽しく出来ることが特技。ラテンの血のなす技か?ぜひぜひ、どこのオケでもいいが招聘して、お得意のイタリアオペラの序曲などを振ってもらいたいと特に思った。
たのしい。

某月26日 東京オペラシティ
Tシティフィルって、略した意味ない?
惑星が聞きたくて、飯森泰次郎指揮のコンサートに。
まず、パンフレットをもらってびっくり。こと細かく、コンサートでの注意が書かれている紙が封入されていた。
ここまでマナーが悪くなっているのか、と思って座ると前席に小学生くらいの女の子と祖父母らしき観客。おっと、と思っているとなにやらもじょもじょとコンサート中、落ち着かなく、話したり、いすをゴトゴトと音を出したり。いやはや。マイッタ。
急遽、次の日の川崎での同じ演目のコンサートに行くことにする。

某月27日 ミューザ川崎
Tシティフィルで惑星。指揮は変わらず、飯森泰次郎。
これで今月のコンサートもお終い。来月もオケの定期演奏会はなし。でも、臨時の演奏会にちょろちょろ行く予定。しかし、毎日のように演奏会通いをしてしまうと疲れてしまうのを発見。結局、それでストレスをためてもしょうがないので、ほどほどがいいってことでしょう。
ホルストの惑星って、パイプオルガンが加わっているのを昨日発見。あの金属音って、オルガンだったのね。

そして、次の月も、その次の月も適当に続く。