オトメンと指を差されて(2)

大久保ゆう

「ブランド物」――ああ何という甘美な言葉。そして世の女性はこの言葉にいつも惑わされる――と思ったら大間違いでオトメンも同じように魅惑されその虜になります。何言ってるんですか当たり前じゃないですか。

女の子がブランド物にきゃあきゃあ言うのが、とっても楽しそうで嬉しそうで、うらやましくてしょうがないんだけど、男の子とブランド物は縁遠い世界。なかなかそういうお店はそこかしこにないし、あったとしても若者が気軽に行けるような場所じゃなかったり。

しかし近ごろ、その現状を打ち破ろうとする動きがあるというではありませんか! それこそ我らオトメンが待ち望んでいたもの――「メンズ館」なのです!

つまり、地下から一番上の階まで全部メンズもので占められるという何という楽園、何というユートピア、何というテーマパークでしょう!(違います) もうそんなものが存在すると聞いただけで鼻血が出てしまいますね!

このブランド志向のメンズ館、2003年の新宿伊勢丹のリモデルに始まって、2006年には名古屋の名鉄、そして2008年、ついに大阪に阪急メンズ館が登場! 各地にオトメンの聖地が生まれつつあるのです!

ですが、女の子のブランド物というと、結構すぐ思いつきますよね。服のほかには、化粧品だとかバッグだとか、ジュエリーもそうですし、靴とかもそうです。でも、もちろん男の子が化粧品とかバッグだとか、ジュエリーを持つわけではありません。(てゆうかたぶん欲しがりません)

じゃあ、いったいどんなものをブランド物というのでしょう? いちばんわかりやすいのは、きっと「スーツ」でしょう。アルマーニやダンヒルと言えば、かなりの人が知っているのではないかと思います。エルメネジルド・ゼニアあたりになると、ちょっと難しいかもしれません。

いつかブランドスーツを格好良く着こなす中年になるんだ! という気持ちが私にもあるのですが、そんなふうに男性向けブランドは「大人」の雰囲気が強いので、女性のブランド物とは違って、若い頃にたくさん持つ、というイメージはまだありません。他にブランド物を挙げてみると大人っぽいものが多いのですが、スーツは終着点としても、小物系のブランド物から始めて徐々にゴールへ近づいていくものでもあります。

たとえば、懐中時計なんかは若いうちでもアクセントとして、あるいは背伸びして持てますよね。例のメンズ館には、英国のブランドであるところのダルビーの懐中時計を取り扱っていたりして、もはや垂涎の何とか、だらしなく言うとヨダレが出ちゃいます。

あるいは名刺入れでも灰皿でも、日常で必要な小物をブランド物にしてみる、っていうのはポイント高いです!(オトメン的に) また、小物のうちでもかなりレベルが高いのは「カフス」ですッ! カッターシャツの袖を止めるためにつけるカフリンクス、一種のボタンのことですね。

今ではカッターシャツはそのまま袖にボタンがつきっぱなしですが、昔はカラーもカフスも本来取り外せるもので、今でもそこが紳士のお洒落のポイントでもあるのです。特に銀のカフスなんかあれですよ、見た瞬間に目が奪われて、欲しいぃぃぃぃぃッぅうわふへぉそ!! なんて勝手に興奮してしまいます。(頑張って声には出しません。妄想にとどめておきましょう。でもたぶん外から見たらニヤニヤしてるので間違いなく気持ち悪いと思います。)

ええと、つまり、普通の百貨店では一階に女性向けとしてジュエリーや時計があったりするわけですが、その代わり、メンズ館にはカフスや懐中時計があったりするわけですね。もうたまらんですよこれは。なかなか二階とか上がれないですよ。よくできてるなあ百貨店の構造は。

他にも嗜好品として葉巻なんかもあるのですが、そういうブランド物への欲望をよくわかってるオトメンを恋人にしたら、じゃあよくわかってるからワタシ(女の子)にブランド物をしっかり買ってくれるのでは! なんて期待しちゃう人がいるかもしれないのですがいやいやそんなわけないじゃないですか自分だって欲しいんだから他人に買うお金があったらそれで自分のためのブランド物買いますよっていうかたとえばブランド好きの友だちの女の子がその子のお金で自分にブランド物買ってくれるかどうか考えたらそんなことないってすぐわかりますよね。うん。残念でした。

なので同じ価値を共有しているからといって男女として仲良くやっていけるかどうかはまた別なのです。友だちにはなれるかもしれないんですが。ってゆうかだいたい友だちになれます。むしろ女の子の友だちの方が多いくらいです。

というわけで、次回は女の子とオトメンが友だちとしていちばん盛り上がれるもの、「スイーツ」(お菓子)のお話です。