広口瓶かチューブか

高橋悠治

すくい取るか 絞りだすか

薄くひろげる 染みていく 
色がまざってぼやけていくなかに見えてくる模様がある

形のない色のむらに眼が形を読み
意味のない音のうごきに耳が意味を見る

一つの形を描けば 描いたままに形が見えるだろうか
一つの意味が その意味として伝わるだろうか

まばらに打った点を 眼でつなげると形になり
形を入れる空間もできる
形も空間も見えないのに 結界ができるのはなぜだろう

点を並べれば線になる 散っていけば面が感じられ
色の濃淡がちがえば 奥行きのある空間ができる

見えない線で結ばれれば 眼が点から点へ移る
その移動から時間が生まれる

奥行きのある空間は 濃淡の層の重なりか
面が近寄り遠ざかって 入り乱れているのか

省略は そこにないものを想像させる
格子からすこし外れた配置が 作用する
位置は可能性