133返メール 舞うてはる

藤井貞和

駅 \ ビルの柱に凭れて、口寄せをしていたらば、と ぼくは書いた。 
いなく \ なってからのぼくは、荻の花咲くぼくの飲みのこしの水が、
真っ青な \ 顔を映す大理石のまえで、ちいさな声になる。 聞こえる?

赤ちゃんの \ 飲む水のように啜る泣き声。 「さよなら」はきみに、
似合わないさ。 \ JRの駅で口寄せをしていたらば(と書いた)、
真っ青な顔が並ぶ \ と、メモのなかから声がする、聞こえる?

天空の窓からおりてきた \ こどもたちは皆、何も告げずに止まり木の、
そこここで散光を浴びながら \ キーボードに向かう。 鳥のあとだ、
5あるいは7。 または自由詩だ。 \ メモリーを最大にすれば、聞こえる?

姉は落ち着いたらば、もういちど来たい \ と言う。 そこいらへんは、
短歌のあとだ。 死んだ家畜たちがぜんぶ \ 集まってきて、笑う。
カミサマはあげはちょうのすがたして舞うてはる。 \ のぼってゆかはる。

(返メール。すみません、ゴミ屋敷のようなコンピュータのなかから、一篇、取り出して、返信するね。)