140 だろう、ね

藤井貞和

だろう、だろうって言う。
きょうの日本語は、
あした、何になるのだろう。
あ、知ることの怖さ。

だらん、とする日本語を、
たいせつにしてきた。
身を、心を、(魂を、)
じんたいの奥に垂らそう、だらん。

いきのを を、
ネリー・ナウマンは垂らす。
どぐうの中線に、

じんたいの井戸から、
深いどろんこを汲む。
あ、知ることの愉しさ。

(ネリー・ナウマンは人類学、考古学、日本学……者。土偶のまんなかに胸から臍まで垂れるラインを「いきのを」と彼女は名づけた。「を」の一つの意味は〈紐(緒)〉で、それに「を」が懸けられているのだろうと思うけれども、その「を」が分からない。「をのこ」とか「をみな」とか言うときの「を」だろう。「を」には〈小さい〉という意味もあった。〈井戸尻考古館にて〉)