美遊――翠の虫籠

藤井貞和

紙一枚、だれの置き土産だろう。
水路を行く火が終わる、
国はうす翠の矢を古墳のしたに。
軍国の形容詞は若い花を挿して、
辞書からしずかに消える、
物語を光らせる字句の入り綾。

(「うそかたまって一つの美遊〈=比喩〉となれり」〈『置土産』〉。西日はさっきから美しく遊んでるし、堰は流れなくなっても詰まった笹と美しく遊んでる。時間の遅さだって美しく遊んだ結果だ。意味に遊ぶな、いつかは暁ける。)