おみなえし

大野晋

夏も盛んになってふと窓の外に女郎花と吾亦紅が欲しくなった。

欲しくてたまらなくなったので、相模原の植木市場に出かけた。運よく、大きな女郎花の株と吾亦紅の鉢を手に入れ、帰宅した。植木屋の季節はいつも早い。夏の中盤過ぎになって咲き誇る女郎花と吾亦紅が盛んに咲いている。少しずれた季節を見ながら、暑い夏の窓辺から女郎花の黄色い花と吾亦紅の赤い水玉のような花を見ているとやがて来るであろう晩夏の訪れを感じるような気がしてくる。

それでも、ふと、季節を忘れて外に飛び出すとやはり暑い。今年は特にとんでもなく暑い。

季節外れの台風がもたらした塩害の被害で、一部が枯れたようになってしまった木々の様子見がてら、週末の夕方、水やりをするのが日課になった。

水をやりながら草木を見ていると、ぎんぎんに暑くなった庭の傍らの、隣堂の葉のわきに小さなつぼみがついていた。そうか、着実に秋が来る。