オトメンと指を差されて(35)

大久保ゆう

Q:鞄がどうしても軽くならないのですがどうすればいいでしょうか?
A:あきらめてください。

どうもこんにちは、大久保ゆうです。みなさん、鞄に物やら荷物やら詰めるとき、物がたくさんありすぎて困ってしまうことってありませんか? ありますよね、ええあるはずです。

私の場合、何をするにしてもだいたい10kgオーバーするので弱ってしまうのです。えっ? どこへ旅行するのかって? いえいえ、普段の通勤とか通学ですよ。あるいは日帰りのお出かけとか買い物とか。ほらほらほら、あれも要るこれも要るって選んでいったら、たくさんになっちゃうじゃないですか。

普通だったら目の前に積み上がった大量の荷物を前にして、呆然絶望しながらこれじゃあ重いからと減らしていくのが常道なのでしょうが、私は持って生まれた生物的な特性によって多少無理をすれば持ち運べるのでなんだかんだ詰め込んでしまうわけで。わちゃわちゃわちゃっと。

Q:でも鞄を軽くしたいんです。
A:むしろ腕力の方を鍛えて下さい。

高校のときは自転車通学をしていて、鞄はだいたいハンドル前のカゴに入れていたのですが、あるときそのカゴが鞄の重みに耐えかねて自壊してしまうなんてこともありましてね、そのときは平常時20kgだったと思うのですが、なんて情けないカゴだとかいいながら太いパイプ製のカゴを取り付けたことがあったり。

部活は演劇でつまるところ文化部なわけですが、運動部の平均を凌駕する鞄の重さからついに私の鞄は周囲から〈米俵〉と言い習わされるようになり、ことあるごとに閉まらない蓋や折り目付の重しにされたりあるいは重量感ある枕にされたり倒れてきそうな物をささえるつっかえにされたりと、周囲の部活からさまざまに利用されました。

別に大したものは入れてないはずなのですよ。普通の人が普通にいるはずのものを詰め込んでいるだけなのに、それをまとめると何かものすごい重量になっているっていう。私が演劇以外に生徒会やら他の部活も掛け持ちしていたからって、それだけで人より重くなるはずはないのですよ。ただ要る(かもしれない)物は全部入れる、全部持ってく、っていう自分内の決まりがあるだけなので。

Q:えっと。
A:無理を通せば道理は引っ込むのです。

それを証明するかのように、今でも仕事用の鞄や研究用の鞄あるいは移動用の鞄は、常に10kg超、さっき10kgの米袋をそれぞれに入れてみたらすっぽり入るどころか持ってみるとやや軽く感じるくらい。

そんなわけなので、私の鞄に求められるスペックなり必要要件なりは、まず丈夫なことと容積がたくさんあること、運びやすいこと、あとちょっとだけかっこいいこと、ということになります。最後はとっても大事。さすがに全部満たす物がなかったりお高くて手が出なかったりすると、自ら改造することになります。いつも資料をつめこむスーツケースは重みでタイヤが自壊したので丈夫なものをあとからくっつけてあります。

ともかくそういった鞄さえあえば、もう一緒にどこへでも行けるわけで、だいたい15kgくらいあれば一通りのものは揃いますので(ノート・洋書・辞書・資料・筆記用具・ポメラその他もろもろ)、それこそどこでも研究・翻訳できちゃいます。大切なバディってことで。

Q:バディって……
A:まあ人体よりは軽い。……お姫様だっこで10m歩くことを考えたらこれくらいなんてことはありません。

はい。ってことで、いつもうろうろごろごろ、在宅ならぬ移動型放浪翻訳者にとっては鞄がとっても大事なわけですが、それを手にどこへ行ってどんな感じで翻訳しているかについてはまた自壊、いや違った次回。