忘れられない日付

イラク戦争開戦から1年、暴力の吹き荒れる世界にも、再び春が訪れる。
映像の伝える鮮血の赤が、きょうもまた目を灼く。
ちょうど1年後の3月20日には、友人たちのコラボレーション作品が、この日付を忘れられないものとしてくれた。自分なら逃避的な表現をしてしまうかもしれないが、彼らはそんな世界に対して、大胆に、自在に、表現を返してゆく。作曲家の鶴見幸代さん、詩人の松井茂さんによる、時事的で芸術的な問題作、『縞縞』。

*電磁波にとりかこまれての自閉症――
現在作曲中、6月発表の2曲についての創作メモ。

『Compostela(星降る野原)- for Trumpet and α 』

「初めて踏んだ砂漠の地。乾いて崩れた明るい色の岩石の質感と、灼けつくような陽射しに目をあけていられない白く照り返した空気とのせめぎあいのただなかにいることの、臨場感に圧倒されていた。~
乾いた空気の中を突き抜けて存在する音、をもしもフィルムに焼き付け、多重露光することができたなら? Still shot(静止画像)としての音響。これはむろん比喩のなかでの出来事だが、感覚の中では矛盾なく存在する。同じ音列によるメロディーが微妙な音響的誤差をともなって、ブレるように響くこと、その連鎖によってつくられた時間軸は、螺旋状に連なり、堆積した記憶の侵入により、歪んでゆく。やがてブレから滲み出してきた音響が、メロディーをかき消してゆく。。」

『Orfeu mix~distant love in electronica2004(仮題)
――for electronic organ,electric guitar, and electronic sound』

世界から剥奪され、断片化されたもの(音響)から、あらたな(身体)像を予兆として結ぶ、という行為に、四肢分断され世界に散種されたオルフェの最期を重ねてみる。

想起することにより現実のものとなる情報。過去-現在-未来が同時にいま・ここに・在るということのシンセティックな意味。合成される全時間の瞬間。継時的なものが無効となる瞬間、をつくる。

electronic organを、(電子の器官)と読み換え、"エモーション""官能"に対して変調をかけ、remixをおこなう。

Stillなものと、溢れかえるノイズとしての情報。重なりあい、変化する景色。
夢の時間、神話の時間における、"Love"のくりひろげられる場所。