feu――翠の虱(24)

三月二十五日、
灰は耀く、
千のもえがらを、
さらに燃やして。


六月十日、
おれおれ詐欺の、
おいらがしれびとのうたで、
けっこう燃えちゃって。


鏡だということに、
気づくまでの時間もまた、
燃えちゃって。


「おれおれ」と言いかけて、
あとのことばを、わす
うし(なう)、なが(れる)――

(失語の研究はつまり、失語すること。おれがすがわらを読み、すがわらを読みながら、ふとわすれる。「志が之(ゆ)く」と思い、何かをうしなう。めぐる日はいたずらだと、みちざねが言う。その父のだったかな、ことばがながれてどうしようもない。父はくるしむ、詩集の一葉一葉。めらめらとめくるページ。燃えてわすれる。)