1月号では今度こそ11月26日に行ったジャワ舞踊公演について書こうと思っていたら、今度は自分が過労で倒れ、初めてインドネシアで、それもソロから遠く離れたジャカルタで入院する羽目になってしまった。腎炎と腎臓結石で1週間高熱が続く。どうやら過労だったらしい。入院した時には病気のピークを過ぎていたのであまり病院で長居はしなかったけれど、その後なかなか体力が戻らず、12月、1月はほとんど寝て過ごしていた。
実は、今やっているジャワ舞踊の活動研究は1ヶ月間休止して、2月はインドネシアで能を紹介するというプロジェクトを実施することになっていた。これは国際交流基金の渡航費助成をいただいての活動である。入院前にはかなり重い症状といわれ、最低でも2週間入院、できたら日本に帰ってしっかり治療した方が...と先生には勧められていたから、このプロジェクトは中止かなあと意気消沈していた。それが思いがけず早く退院できたので、俄然気持ちは元気になって、大車輪で各種手続きを進める。
1月26日にはその準備のために一時帰国し、今あたふたと準備している。2月5日には一行とともに日本を発ち、しかもまた日本に戻ってきて大阪でも1回イベントをする。というわけで今月号ではこの事業の宣伝だけしてお茶を濁すことにする。
■能の表現と能を取り巻く文化■
●2月7日(水)9:00-12:00 増田正造 講演
13:00-15:00 能のワークショップ
●2月8日(木)10:00-12:00 能のワークショップ
19:00-21:30頃まで 公演
ISI Surakarta(インドネシア国立芸大スラカルタ校、旧称STSI Surakarta)にて
ISI Surakartaでは能楽師さんたちにジャワの伝統的な式正空間プンドポに挑んでもらおうと、全イベントはプンドポで行う。ジャワ舞踊はプンドポという能舞台みたいに4本の柱で支えられた中の空間で上演される。芸大のプンドポはかなり立派で大きく、柱のうちのりも8.8mもある。演目は「羽衣」と「石橋」。能楽師さんは全員でも8名となんとか公演ができるぎりぎり最低人数での渡航なのだけれど、プンドポでは能はどんな風に見えるのだろうかと楽しみである。
実は、自分たちが能を紹介する前、2月6日夜に能楽師さんにジャワ舞踊を見てもらうという企画している。彼らに交流相手の芸術を知ってもらい、また私も能の表現とジャワ舞踊の表現の違いを見比べてみたいなということから、演目を指定して芸大にリクエストした。演目は「パンジー・クンバル」という男性優形の極みとも言うべき男性2人による舞踊と、もう1つは「トペン・スカルタジ」という、ジャワ舞踊の3つの型(女性、男性優形、男性荒型)が入っている舞踊作品と。これもプンドポにて。
●2月9日(金)20:00-22:00 レクチャー&公演
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターにて
スラカルタでは立派なプンドポで、能装束をつけての上演だけれど、ここでは袴で上演する。会場はそんなに広くもないから、むしろ座敷で間近に能を見るような、しっとりした雰囲気になったらいいなと思う。観客席のほうをコロセウムのように階段状にして、お客さんには座布団に座ってもらう予定。なんと、交流基金は座布団を持っているのだ!
今回のツアーでは床に座るということにもこだわっている。スラカルタでの増田先生の講演も、プンドポに椅子を並べるのでなくて、プンドポの舞台の上にカーペットを敷いて、みんなで車座になって座る。こういう風にしたいと芸大に言ったら、「ああ、つまりレセハンね」と言われてしまった。レセハンというのは道端にござを敷き、その上にじかに座って食事をする食事どころのこと。スラカルタではまだまだ床に座ることが生活の中にあるけれど、どんな風に皆が床に座るのか興味がある。
●2月10日(土)13:00-16:00 ワークショップ
Dewan Kesenian Jakarta (ジャカルタ芸術協会)にて
ここではジャカルタ芸術大学学生ら、若手の芸術家との交流を目的にする。スラカルタは日本で言えば奈良という感じだ。古いジャワの都で時間もゆったりと流れているけれど、ジャカルタに住んでいるのはジャワ人ばかりとも限らず、時間感覚も、人々の気質もスラカルタとはかなり違う。ワークショップでは両都市の間でどんな反応の違いが出るだろう。
出演者:
シテ方 ...赤松禎英、山本博通、武富康之、齋藤信輔
囃子方 ...竹市学、清水晧祐、守家由訓、中田弘美
講 師 ...増田正造(武蔵野大学名誉教授)
企画制作...冨岡三智
共催: 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター、インドネシア国立芸術大学スラカルタ校、ジャカルタ芸術協会
助成: 国際交流基金、朝日新聞文化財団
後援: 在インドネシア日本国大使館
●2月14日(水)18:30-20:30 レクチャー&ワークショップ
大阪国際交流センター・小ホールにて
ここではインドネシアでの交流の成果を披露。記録ビデオを上映したり、実際にインドネシアでやってきたワークショップの一部を参加者に体験してもらったり、能楽師さんたちにその体験を語ってもらったりしながら、参加者にも今回の国際交流のあり方や今後のあり方についてディスカッションしてもらおうという企画。入場料:1000円
出演者:
上記の能楽師
ファシリテーター: 林公子(近畿大学文芸学部助教授)
解説: 冨岡三智
助成:(財)大阪国際交流センター