台所に「片栗粉」という名前でおいてある澱粉は現在は片栗から作られたものではなく、おそらくは芋からできている。しかし、日本では片栗粉という名前が残るほど、葛と同じように昔から澱粉をとるために使われてきた。現在は人里では滅多にお目にかかれないが、以前はポピュラーな植物だったのだろう。
ユリ科の植物で、春先、地表に広がった2枚の紫の真ん中からすっと花茎を伸ばし、その先端にひとつの下向きの花をつけるのが印象的だ。大きな群落で、カタクリが花をつけている姿は、紫のチョウが春先の明るい森の中を飛んでいるようで実に華やかである。
カタクリの中を見ていると、ときどき、雪解けの地表からにょきにょきとショウジョウバカマが咲いているのを見つけることもある。同じ時期に咲いているくせに、こいつはあまり美しいという印象はない。まあ、数株のショウジョウバカマが集まっていれば、多いかな? と思うくらいで、もし、カタクリと同じような群落を作るのであれば、ちょっと気持ち悪いだろうと思う。
同じく、近くの臨床では、ニリンソウやエンレイソウが咲き始めるし、スミレやザゼンソウなどが咲き始めるのもカタクリの咲き始める頃だ。おそらく、カタクリの花にわくわくと心躍るのは、そういった多くの花が咲き始める春を告げる花だからなのかもしれない。
そろそろ、春だ。花の咲き誇る春だ。
こころのボタンをひとつだけ外してもいい時期だ。