書く手の下から書かれた文字が立ち上がるように
楽器を弾く手の下で音の群れがまとまろうとして
一様に流れる時間軸に添って横たわるかわりに
身を起こしてくる感じが 指に伝わる
時間が 各声部ごとにめくれ上がり
それぞれに脈打ちはじめ
葉陰からこぼれる光のように
ばらばらの音が降ってくる
毎月の最後の日に書くコラムにいつもなやまされ
書くことがみつからないでいるうち
『水牛のように』2005年3月に書いた『gertrude――肖像』
のもとになったメモを発見した 半分は意味不明になっている
それをコピーペーストし その後に別なメモを書き加える
playは こどもや子猫があそぶ もてあそぶ 光がかろやかにうごく
また playは 役割を演じる ふるまう 演じる 上演する でもある
前にはとどこおることのないあそびが
後には既成の型に押し込まれて みせかけのものになる
もうひとつ
play あそびをもたせる ゆとり 自由にうごける範囲
この範囲をすこしずつひろげていく
くさびを打ち込んでこじ開けるようにして
あるいは遠心分離 振り回しているうちにばらばらになる
interest はラテン語 inter+esse 間に位置する 関係する から
興味・関心をもつこと もたせる力 おもしろさ その対象
したがってinteresting おもしろい には主客の区別がない
interest のもう一つの意味 利害関係 利子
間に発生する関係が 無私の関心から 私的利益に移って行く
ことばの近代化だろうか
continuous present
全体のゆったりした進行 と相対的に自立した細部
単語が紙の上に並んで現れる
アリの行列の線と 順序交換できる個々のアリの群
数珠と数珠玉 樹と木の葉
書かれた文字が紙の上に起き上がろうとしてもがいている
反復か更新か リズムは変化する
changing same (Amiri Baraka)
波また波
すこしずつ変化する写真の連鎖から映画へ
現実は直線ではなく ためらい手探りする進行
階段を降りる裸体(デュシャン) 時間的キュビズム
フィルムの一コマには写真の意味はない
反復ではなく
どこか似ているものが そこここに現れるだけ
これが逆遠近法か
毎日が新しくはじまる
始める可能性(ハンナ・アーレント)
story 作り事 物語 また 階
階は上下に積み重ねられ
物語は線に沿って伸びていく
風景としてのplay 人物の配置図は
そのたびに組み直される
進んでいくと 遠い山が何回も正面に現れる
道は曲がっている
立ち聞きした会話
物語はいらない
話題は混ぜ合わされ 解決なく放置される
小文字のi(カミングス)
everybody = every body 無名の ただの 身体
= no body 身体のない身体
だれでもないものが 耳を澄ましている
i feel / they think
感じの直接性・即時性・具体性から
考えの間接性・非時間性・抽象性へ
common sense 共有感覚