メキシコ便り(6)

メキシコにはたくさんの謎がありますが、そのなかのひとつが解決しました。
以前、地下鉄の女性車両について書きました。人の多い駅にはガードマンがいて、前3両には男性を通さずに女性専用車両にしているが、人の少ない駅はガードマンがいないので、男性も乗り込み結局は女性専用車両にはならないという話でした。これをメキシコのいいかげんさのせいにしていましたが、ちゃんと理由があったんです。というのはこのガードマンとおもわれた男性、実は、テントンと呼ばれる人で、満員電車に乗り込む人のお尻を押す役目の人だったのです。女性のお尻は押せないので、前3両に乗ってもらうべく乗降客の多い駅だけ通せんぼをして男性と女性を分けていたというのです。私はあまり男性のお尻を押している場面には遭遇したことはないのですが、なるほどこれで納得です。それにしても女性専用車両を作るという発想が日本のように痴漢防止のためではないということは、メキシコには痴漢はいないのでしょうか。そんなことはないと思うのですが、ひょっとしたらメキシコの女性は強いので、恐ろしくて触れないのかもしれませんね。

さて新しい年になって約1ヶ月。ここでメキシコのクリスマスとお正月についてレポートしておきたいと思います。
12月に入ると同時に街はクリスマス仕様になり、ターミナルや公園、ソカロなどには大きなツリーや、ナシミエントと呼ばれるキリスト誕生時を再現した人形飾りが置かれます。各家庭は屋根やベランダにサンタ人形などを並べ、家のそばの木々は小さな光が美しく点滅します。トナカイの角をつけた車が街を走りまわり、子どもたちの帽子にも小さな角がついています。そしてポサーダも始まります。これはイエス誕生の直前に、マリアとホセが宿を借りるため家々を回ったことにちなんで行われるお祭りで、ご近所各家の持ち回りでパーティーを開きます。そしてそのときにマリアとホセ、宿の住人とのかけあいの歌を2つのグループに分かれて歌います。そしてピニャータといって、中にお菓子や果物を入れた星や動物、最近ではスパイダーマンの形をした大きな人形を用意します。それをひもでつるし、揺らしながら目隠しをした人が割るのです。そばにいる人が右だ、左だ、上だ、下だとはやしたて、とても盛り上がる行事です。私の学校でもポサーダがあり、先生と生徒が落ちたピーナッツやみかんにむらがり、私もおすそわけをもらいました。とても楽しかったです。

24日のイブの夜は家族がみんな集まり、夜9時になると教会に行きます。2時間足らずのミサのあと帰宅し、会食が始まります。七面鳥や豚の足のオーブン焼き、タラ料理などを食べます。そしてそのあと、山のようにツリーの下に積み上げられた贈り物を、名前を呼ばれた人が「アブレ、アブレ(開け)」の声のなか受け取り、それを開けます。私も誰からかわからないものも含めて、4つも素敵なプレゼントをいただきました。約30名近くの家族全員の数のプレゼントを用意する人もいるので、その数は尋常ではありません。そんな中の一人、ナンデジェが買ってきたプレゼントの包装を手伝ったのですが、包装紙の質のせいもあるのでしょうが、なんと2時間もかかってしまいました。贈る相手の顔を浮かべながらプレゼントを考え、用意するのは大変でしょうし、すぐに破られてしまう包装に2時間もかける彼女を見ていて、メキシコ人の家族に対する愛情の深さに感心しました。

このようにクリスマスはメキシコ人にとって大イベントなのですが、このクリスマスの飾りつけは1月6日のレージェス・マゴスまで続きます。レージェス・マゴスはイエスの誕生を祝いに東方の三博士が贈り物を持っていったという日で、この日、ロスカ・デ・レジェスという大きな輪になった甘いパンの中に白い小さな人形を入れ、パーティーに集まった人たちで切りわけます。この人形が入っていた人は2月2日の聖母マリアの日にパーティーを開き、みんなを招待することになっています。この人形は幸運を呼ぶといわれ、1年中、大切に持っていなければなりません。ここメキシコではサンタクロースより、東方の三博士が子どもたちにプレゼントを持ってくるというのが伝統的で、この日も子どもたちはプレゼントをもらい、またもやピニャータもします。

こんななかで、新年はとてもあっさりしています。休みもだいたい1月1日だけで、2日、もしくは3日から仕事が始まります。
12月31日、やはり家族が集まり、ロモ・デ・セルドという豚肉料理やリンゴのクリームサラダ、ポンチェという果物を煮込んだ熱い飲み物などを用意し、夜の10時ごろから食事をします。そして、12時には12個の葡萄を食べ、シードラというリンゴ酒で乾杯します。葡萄ひとつにつき、ひとつの願い事をするので、毎年、12の願い事をメキシコ人はしているわけです。クリスマスプレゼントの数といい、新年の願い事の数といいやはりメキシコはスケールが違います。それにつけてもパーティーの数の多さ、やっぱり年がら年中お祭りをやっている国です。