旧暦三月三日(四月八日)、浜下り。海に入り身を清め、潮干狩りをしたりする日。
すっかり忘れていた。姉が海藻やモズクを採ってきたのでお裾分けをいただく。翌週、娘を海に連れていく。行ったのは北谷のビーチ。昔、飛行場だった場所が返還され開発され映画館、ホテルなどのリゾート施設ができどれくらい経ったろう。ビーチはよそから砂が運ばれて造られた人工ビーチ。修学旅行の生徒だろうか、砂浜でバレーボール、そのあとはバーベキュー。片方ではアメリカン・スクールの生徒が大勢遊んでいる。こちらは遠足みたいなものか。海に足を入れるとまだ冷たいがすぐ慣れる。たいして時間もかからないので、水着を着て車に海へ行き、水着を着たまま車に乗り込み帰る。
暑さに我慢できず扇風機のスイッチを入れる。
うちでは扇風機をしまう、ということはない。どうせすぐ使うから出しっ放しにしているだけだ。暑さのせいか、前々からやろうとおもっていた通常のエレクトリック・ギターを改造し六弦のスティール・ギターにすることを決行する。正式には膝の上に置いて弾くのでラップ・スティール・ギターだ。フレットが摩耗して、普通に押弦をすると音がびりつくギターを専用のパーツを使いスティール・ギター並に弦高をあげるだけ。改造はいたって簡単で「エクステンション・ナット」という金属製のパーツをギターのナット部分に取り付け、弦高を約1センチほどあげスライド・バーを滑らせるときにフレットに触れないようにする。パーツは以前、ネットでメーカー、価格ともに調査済み。安価なものなので通販で購入すると、送料のほうが高くなりかねない。パーツの写真を印刷し近所の楽器屋で取り寄せ可能か確認する。すると楽器屋のお兄ちゃん、写真を見るなり「スティール・ギターのものですね。」と言い、店の奥へ行き品物を持って来てくれた。すげぇ。たまに、誰が買うんだ、こんなマニアックなもの、と心配になるものを置いていたりする店だ。二、三年売れずに置きっぱなしになっていて半値になっているギターもある。そうするとなんとか、家庭があるおじさんでも、購入できる。まだロックの街の気概は残っているのか。改造したギター自体は三十年近く前の日本製コピーモデル。高校を卒業する前に友人から購入した。以来、電気系統のパーツは一切交換していないため歪みとは違う、適度によごれた音がする。このよごれた部分が気にいっている。理想はジャクソン・ブラウンの名曲「ファーザー・オン」のバックで鳴るデイヴィッド・リンドレーの音、マヒナスターズのそれではない。実際音を出す。理想と現実のギャップに元ロック小僧の気概は失せる。これもアラン・ローマックスの本を読み、確認がてら手元にある戦前のブルース・ミュージシャンの映像を見直し、アメリカのルーツ・ミュージックの音源を久々に聴き漁ったためか。
ある日、作業着でデッキブラシを持ち、水を流しつつ、雨水で汚れたコンクリート製の墓を掃除。翌日、清明で自分の家、両隣にある親戚の墓にお供え物をし拝む。そしてだんだんと暑さをまし五月を迎え、梅雨が来る。