訳詩

(6月のコンサートのためにモンポウの歌曲の詩を訳した)


 魂をうたう (Cantar del Alma) サンフアン・デラクルス

あの永遠の泉の隠れ家
それがどこかはわかる
夜のなかでも

その源はどことも知れず
だがそれこそがすべての源
夜のなかでも

くらべるものもない美しさ
天も地もそこで飲む
夜のなかでも

その流れはゆたかに
地獄も天国もまた人も養う
夜のなかでも

泉から湧き出る流れは
みごとでつよい
夜のなかでも

生きた泉を求めるのなら
それはいのちのパンのなか
夜のなかでも


 きみの上には花ばかり (Damunt de nos nom_s flors) ジョセップ・ジャネス

きみの上には花ばかり
まるで白い供物のよう
光はきみのからだにふりそそぎ
枝にはもうもどらない

香りのいのちすべてが
口づけとともに贈られて
きみはかがやいていた
閉じた眼に充たされた光のせいで

せめて花のため息であれば
百合のようにきみに身をささげ
きみの胸の上で萎れ
そうなれば
きみのそばから去ってゆく
夜を知ることもなかっただろう


 遊びうた(4-5-6) 作者不詳

4.ギーコギーコ

ギーコギーコ
サンフアンの木こり
上もよく挽く
下もよく挽く

凧揚げ 何あげよう?
ドングリとパン
夜にはパンと梨
それとも梨とパン

5.パリ娘

パリの小娘
灰色の靴貸して
天国へ行くため
一人一人は
聖者の道を
二人並んで
空の道

6.鳥さん、かわいい鳥さん

鳥さん、鳥さん、かわいい鳥さん
そんなに急いでどこ行くの
通りへ
牧場へ
一二三

(次に ジョビンが作曲した『黒いオルフェ』のための詩二篇)


 幸せに (A Felicidade) ヴィニシウス・ジ・モライス

悲しみには 終わりがないが 幸せは終わる

幸せは風に舞う羽のよう
高く飛ぶのも とまらない風を
感じているあいだだけ

貧しい人の幸せは
祭りの幻
一年はたらいて ほんの一瞬
夢のなか

王様 海賊 花作りになって
灰の水曜日にはすべてが終わる

悲しみには終わりがないが 幸せは終わる
幸せは花びらの上の露のよう
平和なきらめき やさしくゆれて
恋の涙となって落ちる

幸せはきみの瞳のなかの夢
過ぎゆく夜は夜明けを探す
しずかにしてね 

一日のはじまりに元気にめざめたら
愛の口づけをしてくれるように


 モディーニャ (Modinha)  ヴィニシウス・ジ・モラエス

心がこんなに引き裂かれては
生きていけない
幻想にとらわれ
幻滅するだけ
ああ、こんなふうに生きるなんて
絶望の月の光が
憂鬱を心にまき散らす
そして詩を

悲しい歌が胸から出て
思いの種をまき
心のなかで泣いている
心のなかで