ゆきみちを
歩いてかえる
ちいさな家まで
ゆきふみしめて
靴のうらでふまれたゆきが
きゅきゅっと固まり
赤いゴム長
パリンと割れる
ゆきみちを
歩いてかえる
ちいさな家には
山羊小屋もあって
小暗いすみで
生まれたばかりの
子山羊も眠る
大人たちの顔にまだ
ときおり笑みが浮かんだころは
ポプラの枝がかたかた笑い
重たい雪を抱く蝦夷松も
ひそかな燠を埋めていたよね
ゆきみちを
歩いてかえる
ピンネシリの山のむこうに
オーロラ色の陽が沈むまえに
いそいでかえる
切れかかるミトンの紐に
かじかむ指で
キーボードたたいて
走ってかえる
荒れくるう
暗い記憶のトンネル抜けて
消えかかる
ちいさな家へ