文字をしらない
はなさんは
学校をしらない
はなさんは
誕生日をしらない
はなさんは
生まれは新潟
米どころ──でも
父も母もしらない
はなさんは
オレゴンのサカジャウェアさながら
やさぐれ者の手に渡り
流れながれた開拓地では
おさないころから朝起き
煮炊きをおぼえ──さらに
たんと知らされたろうか
ひとつのことを
地中ふかく人の手がのび
黒い燃える石を掘るため
「まっくら」の世界に
あつまってきた男や女の群れのなかで
黒煙くゆる
赤平の、歌志内の、文殊の
ずらりとならぶ長屋また長屋で
その目に写っていても──たぶん
見えなかったか
ピンネシリは
はなさんに
見えてはいけなかったか
熊笹のかげの
サカジャウェア
たち
は