「製本」にひかれる全てのひとに、読んで欲しい詩集がある。高橋昭八郎さんの『ペー/ジ論』(思潮社 2009.5)だ。表紙に刷られたV字型の柄に、きっと馴染みがあるだろう。製本前の刷り本の背にみられる背標をモチーフにしたもので、56折り分が記されてある。背標とは丁合のミスをなくすために折りの背に階段状に印があらわれるよう考えられたしくみで、オンデマンド印刷などをのぞく商業印刷本にはみなこれがついている。愛用されるシステムは単純で美しい。愛されるように、気に入られるように、そういう思惑がないからだろう。本というモノが背負う美しさをまとったこの詩集を手に、まずは背標の柄よろしく指でV字をつくり、本よありがとう!永久に!と叫ぶのだ。
本文紙は208ページで13折り、そして前後に4ページずつのやや白い遊び紙がつく。表紙も白、そこに紺で背標柄が刷られ、タイトルと名前が空押しされている。表紙全体に透明の表紙カバーがつき、「過剰な文学的〈意味〉によって遮断されてしまっていた詩の可能性が、ここに新たに浮かび上がってくる」としめた詩人・奥成達による帯文が黒でビシッと刷られている。表紙を開けば、背標柄による誘導もあるのだろう、51ある作品それぞれが、大きな紙、そしてもっとずっと大きなところに生まれていて、それがパタパタと折り畳まれて今この手の中に届けられたと感じる。限りない広さとは、全ての本が持つべき力だ。
2004年7月29日〜8月12日に、高橋昭八郎さんの個展「反記述による詩」が東京で開かれた。うだるように暑かったが、幸せな夏だった。この展のために「ページにみる余白 本のかたちがうむ白のイベント」と題して昭八郎作品への感想を寄せていたので、読んでみてください。
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