製本、かい摘みましては(54)

山崎曜さんと村上翠亭さんの共著による『和装本のつくりかた』(二玄社)を買う。二玄社といえば車とばかり思っていたが、いやいや書や美術関連の本もたくさんお出しになっている。こうした本も最近はボワッとユルッとモワッとしたデザインが多いが、こちらは見た目がとてもオーソドックスで、それが狙いどころでもあるのだろう。内容は、書家である村上翠亭さんと手工製本家の山崎曜さんのお二人がからみあってというよりは、前後ほぼ半分ずつ、それぞれご担当されている。書のたしなみの延長としての和装本を村上さんが、書に限らず葉書や写真を、また洋紙やグラシンペーパー、革や割りピンを取り入れているのが山崎さん。全体の流れは、「糊でとじる、糸でとじる、折本をつくる」。おふたりそれぞれの和装本づくりをそれぞれの方法で見ることができて、それがこの本の一番の見どころだろう。

村上さんが作った見本にある文字の、なんてうつくしいこと。豆本には「ナイショ ナイショノ 話ハ アノネノネ」「「運転手は 君だ 車掌は 僕だ あとの四人が 電車のお客 お乗りは お早く 動きます チンチン」などもある。そうだ、上からなぞって書いてみようと買った黄庭堅の「草書諸上座帖巻」のコピー本はどこにいったかな。その一部を摺った手拭まで買ったのだった。落語の「紙屑屋」では若旦那が奉公先の紙屑屋でゴミの中に都々逸や新内の稽古本を見つけては歌ったり読み上げたりで仕事にならないが、折った手拭を片手にのせて指先でめくるしぐさはまさに和装本だからこそ。今、気分が洋紙より和紙なのは、秋風のせいだろうか。