ゴム短裏の
土踏まずに
稲の刈り株
ごつごつふれる
霜近い
十月の田んぼ
つぎつぎと崩れる
稲架(はさ)のてっぺん
から裸電球こうこうと灯り
うずたかく
稲束のせて
最後の馬橇が納屋にむかう
夕闇に
残される二本の轍
それは
ぬめりぬめる青土を
太陽が煮つめ
馬橇が型押しした
泥濘羊羹
うっとりふれる土肌は
凛としまり
なめらかなベルベット思わせる
北の、灰色の
抜き差しならぬ
深みのはてに迎える
祝祭のとき
黙視するピンネシリを
空腹をわすれて
林檎かた手に
見あげた、あの──
知らぬまま
註)「泥濘クロニクル」からはじまり「ベルベット泥濘グラウンド」で終わる3つの詩は、木村迪夫『光る朝』(書肆山田、2008)の詩句からヒントをいただきました。