まだ初々しい夏至の夜に

百日紅の
花房散り敷く
しっとり湿った土のうえを
それが道というなら
道を
きみは歩く
ほの暗い
十九の夏の夜に向かって

どこへ誘われるのか
知らぬままに
知りたいと思わない
慢心の一瞬を嫌悪しながら
ひりつく舌で
在ることの
苦味を
かすかに確かめながら

それからというもの
憧憬の砂塵へはげしく突っ込み
未練の岩をまたいで
太古から枯れない涙の湖を見渡し
屍の大河をながめて
球体のファンタジーに
☆をちりばめ
飴色の知の光を追いかけ
こまやかな人間の移ろいは避けて通り
それでいて
ひとりよがりの
喜悦の滝に打たれることはない

かくして
まるはだかの
十九の夏の夜に向かって
湿った土の
それが道というなら
道を たどる
百日紅の花房とじて
いまも十九と変わらない
きみがいる
まだ 初々しい
夏至の夜に