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目だけでは対応できない
どんなに微細な差異を見抜いても
インクのように漂う霧雨が生むこの不分明に
目はまどわされる
耳だけでは対応できない
海上をわたる小鳥の声を数キロ先から聴き取り
野火がはぜる音をよく感知する耳も
無音には沈黙にはどうにも応えようがない
手だけでは対応できない
牙に裂かれた肉の傷をみごとに縫合する夏の手も
歳月を閉ざす氷のむこうで乱舞する魚の
群れには触れることさえできない
声だけでは対応できない
軽はずみな心が子馬のように跳ね回るとき
歓声もかけ声も叫び声もなす術がない
私とはただ無において統合された目、耳、手、声
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満月の論理に一般と特定の区別はない
眺める人の心に浮かぶ月影の紋様
ネットワークは幾何学的に発生し
ときどき氷のように光が凝固する
たくさんの団子をすすきとともに供えてみた
ハクビシンの親子が物欲しげに見るのを
ウクライナ人の老女がけらけら笑いながら見ている
秋のこの時期こそ祭礼の夜
循環する時間が声のように聞こえてくる
楽しいね、楽しかったね、楽しいね
もう来ないね、また来るさ、また来るよ
荒城に登りて楼閣を燃やし
それを松明として以て絶対的な持続を照明するのみ
輝けよ縞の尾
きらめけよ妖しい鼻
満月の無垢が砕け散りたくさんの団子となる