きんきんと風が冷たい夜の街を歩いていたら。
おばあさんに道を尋ねられた。
真っ黒の服、
緑の瞳、
まっしろな髪、
挙げ句に早口呪文のような言葉を喋るので、
どこの魔女かと思いきや、それは呪文ではなく英語だった。
道を尋ねていると理解することは出来ても
英会話能力皆無の私は、どう説明すればいいのか全く解らず
とりあえずおばあさんが手に持っていた地図を奪って、
矢印が書かれた目的地(駅前のホテル)を見る。
ここに行きたいのですか?
と、矢印に指を差して表情とジェスチャーだけで伝えてみせると、
おばあさんは輝く笑顔と激しい頷きを見せてくれた。
足腰が弱そうなおばあさんと手を繋いで、
名前もどこの国の人かも、何故こんな汚い街に来たのかも
聞く事ができず、わからないままそのホテルまで行き、お別れした。
なんだか忘れられないので、絵を描いてそのおばあさんを思い出す。