ことばの種子を蒔く

謎と氷がとけたとき
避けられない天災と
避けられる人災が襲ってきて
溶けないはずのものまでとけてしまい
土が
海が
生き物が
震えおののく

粋をみがいて無意識に
おごり 
やせる 
都のこころをなぐさめるように
雪の舞う東北の
瓦礫のなかから
土くさいことばが聞こえてくる
なんという皮肉

この春
風に運ばれるのは
花粉だけではなかったね
列島をつらぬき
まるい空をおおって
世界をつなぐのは
放射能だけでもないんだよ

それでも/だから
憂いの染みた土にむかって
ぱらぱらと
ことばの種子を蒔く
悲しみをとかして耕した湿地のなかに
祈りをこめて種子を蒔く

長いながいときがたち
やがてふいに芽吹くのは
草木だけではないのだから