青白い雲に、湿った空気。
梅雨に入って、雨の日が続く。
このような天候を見ると、小学生の頃、
近所の野原で出会った、あのニワトリを思い出す。
真っ赤なトサカに、黄金色のツヤツヤした羽毛、
はたきのような、深緑色より暗い尻尾。
奴はある雨の日の夕方、一匹狼ならぬ一匹鶏として
野原で一人遊んでいる私の目の前に現れ、
実家のそばの雑木林で、ひっそりと生き始めた。
養鶏場でも飼育小屋でもなく、林の中で堂々と歩くその姿は
とても凛々しく、少し滑稽で、私だけでなく近所の人達の興味をもひいた。
毎日、朝から夕方まで優雅にそぞろ歩いては餌を探し、
夜は決まった寝床(木)で自分の身体に埋もれるようにして眠る。
その姿を見るのは私の楽しみだった。
誰にも守られず、自由に生きる事を選んだ宿命なのか、
その何ヶ月後かに、野犬に襲われて死んでしまったのだが、
奴が寝床にしていた葉の多い茂った木を見ると、
またそのうちひょっこり姿を現すのではないかと、たまに思う。