荘司和子訳
草がなびく
風が吹いてくるとき
風の行く方へと
草はなびく
こころがなびく
土地には歳月があり
天には星辰がある
風が還ってきて
ぼくはきみと出会う
草がなびく
眠りにつくとき
草は
じっとして
葉は 重なって並ぶ
冷気が
夜露が 涙をふりかける
魂のないやつのように
風もない まやかしもない
眠っているときは
時を超え 闇を超える
さわさわと風がわたる
おまえは流れに逆らわない
風は通り過ぎてゆく
おまえは風と戯れる
楽しげに
優しく揺れる力とともに
満たされたこころで
風 と 草
草 と 風 自由に
昼と夜は交替して
いつまでもめぐり続ける
風がかすかな音で ウィウ ウィー
草をなびかせてゆく
風がかすかな音で ウィウ ウィー
草をなびかせてゆく
マイタイおじさん、と同じアルバムに収録されている歌ですが、メロディに哀調があってひときわ印象に残ります。スラチャイの歌にはジャングル時代の同士や田舎のおじさん、おばさんは出てきても女性が登場することがないので、貴重な歌です。うたっているのも女性歌手です。スラチャイが自分でうたっているのは「さわさわと風がわたる」で始まる一節だけ。ふたりめの奥さんとなった若い女性を暗示しているように聞こえます。(荘司)