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読むことがこれほど問題になった海岸はない
文字の海岸だ
文学の海岸だ
外国と外国語がさまざまなかたちで漂着する
陽光と砂と波の無限の演奏の中で
移民たちが生きるための説話を探している
そのころぼくはある言葉を発話してそれとは
まったく違うことをいうとか、同時にいくつもの
相反する意味を伝えることなどに没頭していたので
紫外線を浴びすぎることもまったく気にならなかった
そのうち自分が自分自身のメタファーでしかないような
人生に飽きてしまい、歩き出すことにした
海岸線とはそれ自体無限
一歩毎につま先がさす方向を変えるようにして歩きつづけた
魚の頭を嚙んでとどめをさす漁民たちに会った、その先に
ダイアモンドの頭を光らせて巨人が眠っていた
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歩くことは穴に落ちることで
穴はときどきポータブルな海溝の深さをもっていた
まるで底が見えない怖さを反転させて
太陽ばかり見上げるようにした(見つめることができないものを)
水面下の一定のレベルで
マンモスが泳ぐところを想像してごらん
そんなふうに大きくひとつに群れた魚たちが
決然と一方向に泳いでゆくのだ
生命の回遊する層はいつでも頭上にある
そこでは聖アントニオが歴史的な説教をしている
やがて星から落ちてくるかけらを木の葉と思いこんで
にやにや笑う魚たちが上陸を計画する
それでぼくも水から上がることにした
熱い砂を裸足で歩くときがきた
その苦痛を乗り越えたとき空が紫色に光る
この苦痛を覚えておくため足首に墨を刺した