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「何を持っている、彼は?
彼は彼が持っているものを持っている。
でも何を?」(ウォレス・スティーヴンズ)
おれがおれである以前にはなくて
いつしか所有が始まったものとは何だったのか
本能的な哲学ではなく野蛮な言語でもないだろう
日焼けした椰子の実でもなく狼の毛皮の聖書でもないだろう
おれはただ歩いた一歩のその足跡において
そのつどの小さな面積に見合っただけの経験を得た
所有とは物ではなく、そんな足跡の累積だった
持つことと失なうことの区別もよくわからないな
狂ったような力で吹きつけてくる風に気まぐれな心を飛ばすとき
そのとき「持つこと」自体が失なわれて
「すべて」がきみを丸ごと捉えることがある
星から斜めの光がさしてくる
おれのすべての足跡が砂漠に還元される
42
光の中への閉め出しという事態が想像できなかった
ここから、この光から
逃れるということができない
壁もなく、扉もなく、屋根もなく、風見鶏もいない
光が恩寵であっても音楽であっても
それをかわすことができない
不思議なことにそんな出口なしの状況でも眠りは訪れる
熱い砂浜で皮膚の表面がどんなに
焦げ、傷つき、悲鳴をあげるとしても
網膜をシャワーのようにつぶつぶとした光にさらしながら
暗闇がふと希望のように、あるいは夢として
思い出として訪れるのだ
光に対抗する決意をしておれは
瞼の裏側から赤、オレンジ色、紫を追放する
おれが求めるのはしずかな暗闇
眼球を星空のように落ち着かせる藍の先にあるもの