凍った海の上を、歩いたことがあるかと訊かれた
無い、と答える
昔、北に住んでいた知り合いの家の目の前は海で、
真冬になると水平線の向こうまで氷が張り
見えもしない向こうの島まで歩いていこうとしたという。
一歩間違えれば、氷が割れて溺れていたかもしれない、と
笑いながら話す彼女。
海に縁がない私には未知の世界のお話で、
興味津々だった。
凍った海の上からの景色
どんな風が吹くのだろうか
どんな音が聴こえるのだろうか
知らない地面の空気が、足元から
煙のように舞い上がってくるような気がした。