マンゴー通りからきた詩人

いまにも泣きそうな
おもたい空の表参道で
マンゴー通りからきた詩人と会った

インディゴブルーの長衣をはおり
髪なびかせて立つサンドラ・シスネロス
耳には陽の光はなつ
ターコイズのイアリング
マヤの人
サンアントニオの人
ナワトルの人
テハスの人

光にぎやかな通りを
渋谷駅まで歩いていくと
ついに空が決壊して
たなびく鯉のぼりのすきまから
ぱらぱらと雨滴を垂らし 
ハチ公はどこ?
ときく犬好き詩人の髪にかかり
それを写真におさめようとする
Sさんのカメラレンズを濡らし
わたしたちの声を
金曜の夜の喧噪のなかに解かした

世界じゅうの大河と話ができる
マンゴー通りからきた詩人は
ぽっかりあいた喪失の空隙にも
いつのまにか
生まれるものがある

そこだけ透き通るような声で語り
うっすら放射能によごれた
東京の水を飲み
この土地の野菜を食べて
だいじょうぶ
といって大きな胸にわたしを抱き締め
ごみ箱あさる 
東京のカラス万歳!
という詩をおくってくれた