蘂をめぐり 運命の花瓣よ
一萼のうえに並ぶ 一枚
たてまつる 水を受けよ
音無くて また一瓣を抜けば
悲鳴を吸い上げる 受けよ
地上の盥 すべてひらけ
かなだらいより 瓜子
這い出よ 包め芯
つよい鞭毛が 落花よりも
はやい足で あの人形を救え
その人形を拾え 客神よ
(なお一言――〈子供たちを見送った後の屋上に立つと、決壊した堤防から昇る朝日に照らされ、変わり果てた荒浜が見えた。「壊滅」とはこういうことなのだと知った〉と、多田智恵子先生の手記である。給食用の野菜を納めてくれた方、米作り、シジミ獲りを教えてくれた方、酷暑の日も、強風の日も、路上で子供たちの安全を見守ってくれた方。学校がお世話になった方々......(『世界』別冊〈二〇一二・一〉より)。「壊滅」という言葉を多田の手記から記憶しよう。念願の六年生の担任を「終え」て、離任式もなく荒浜小学校を去る一教諭の手記から、宗教人類学者山形孝夫は「実存的で真摯(しんし)」という、強い印象を受け取ったという。この「実存」そして「真摯」という語も拾っておこう。)