ピンネシリから岬の街へ── JMCへ

ニアサランド製サンダルはいた
爪の先から土埃はらい落とすように
男は 真夏の岬の街から船に乗り
赤道をひらりとまたぎ
降りた港のサザンプトン
そこは真冬だよ 真冬
サンダルばきじゃやってられない
臨港列車に乗り継いで
あこがれのメトロポリスへ向かう
ポケットには84ポンド
それが蓄えのすべて

植民地生まれのエリオットや
パウンドみたいに 住みついて
仕込んだファッション 
ほら 岬の街に帰ってきた
髭を生やした23歳
黒いスーツにネクタイしめて
手にはこうもり傘と革鞄
プロヴィンシャルの 属国の
美しい風の街を闊歩する

なあんだ
60年代は世界中どこも
そんな時代だったのか

ここから出て行く
閉じ込められずに
プロヴィンシャルとは
地方とは 
そんな思い募らせる場所
それでいて
土くれとともに
あの風景のなかに
死んだら姿を消したい 
紛れたいと 思いをはせた遠い記憶
ノスタルジアふくらませながら
回顧する場所

粉雪が舞い狂うピンネシリの
ふもとに広がる青い幕
その彼方へ
先住びとの邪魔をせずに
アイヌモシリのすみっこに
どろん 
紛れさせていただけるかな
そんな祝祭はくるかこないか
Tokyo の初冬から初夏へくるり反転
岬の街まで出かけていって
青い山から幾度も 幾度も
遠く離れて 考える