イラクからスハッド&ハディールの姉妹が来日し、長崎をはじめに、東京、大阪、松本、宮城、福島をぐるっと回った。バイオリンと、オーボエを抱えて、コンサートツアーと称したが、僕の意図したところは、バグダッドを生き抜いた子どもたちの音を聞いてほしかったこと。
10年前、「大人はどうして戦争するの?」と厳しく問いかけたイラクの少女は20歳になっていた。この問いに、アメリカだけではなくて、戦争を支持した日本の大人たちも答える義務がある。日本が、戦争に加担しているという意識はほとんどない。僕も、昨年まで大学で教えていたときに生徒たちに聞いてみたら、「自分たちがキチンと就職できる経済成長が一番大切」という意識で憲法9条を変えることもいとわないという意見が多かった。
戦争という選択に、その土地で生きる人たちの生き死が見えず、日本の子どもたちは、「かしこい」大人になっていくのか。だから、今回のツアーでは、同世代の大学生との対話の場を作り日本が加担した戦争を生き抜いたスハッドら姉妹から「戦争」を感じ未来を考えてほしかった。しかし、イラクは、現在も一か月に1000人以上が殺されている状況で、「暮らしはよくなった」と答え続けるスハッドには、子ども時代の平和なイラクの記憶は薄れ、戦争に慣れっこになってしまっている。
今まさに、アメリカがシリアを攻撃しようとしている。
化学兵器は誰が使用したかもわからないのに、アサド政権への懲罰だという。
空爆で痛みを受けるのは、シリアという土地で生きる子どもたちだ。国際社会は、アサド政権と反体制派の話し合いの場所を未だに作れずに、アメリカの軍事介入で、さらに戦いはエスカレートしていくだろう。
僕は、アメリカの武力行使に反対する。日本政府は、攻撃を支持すべきではない。
10年前に、当時10歳のスハッドちゃんが描いた絵に、NO WAR !と書き足したのは、私たち、大人だった。
私たち大人は、大人になったスハッドらとともにこれからもNO WARと言い続けなくてはならない。