島便り(6)

家族に猫が加わりました。
老夫婦と小猫の組み合わせは、なんかヘンです。
40数年東京で猫のいないときがなかったほど猫キャリア高の平野家ですが、島に移住してからは、私たちより長生きするだろう動物と暮らすのはやめようとすっぱり決意していたのに、です。

ある日、車で連れてこられたのは、お寺に捨てられていた白に薄茶ブチの子猫のオスで、かた耳をカラスにやられたらしく負傷猫でした。慈空さんという坊さんからたのまれたので、名前を空(そら)として引き取りました。生後2ヶ月でした。

これがなかなかのヤンチャで甘えん坊暴れん坊の島猫でありました。
日に三度は行方不明になる。名前を呼びながら探すわたしに気がついて、結局は戻っては来る。屋根や大きな樹に登ってしまってから、助けを求めて泣く。しかたなくハシゴに乗って助ける。耳の治療に町に一軒しかない遠くの動物病院へバスに乗って通う。道中泣きっぱなし。わたしを親猫の代わりに、噛む蹴る跳びかかる。おかげで手足はキズだらけのDV状態。夜はわたしの敷きふとん内でゴソゴソ。
家中のそこここには捕まえて来た昆虫やムカデや蜘蛛の残骸だらけだ。
まだ来てから一月半なのに、すっかり俺ん家という態度でのさばっている。
この先、保育園も学校も行かない、したがって宿題もない。
しかも何の役にも立たないのが、猫である。

家の回りは四方を山で囲まれている。毎朝山にかかる霞や雲をみて、お天気状態がわかるようになった。遠くから響き渡るミキィーン、ミキィーンという雄シカのよび声は恋の季節の到来だ。めったに人前には姿を見せないがイノシシやシカ、タヌキ、カラス、トンビ、サル、リスなど鳥や野生動物がひそんでいる。
ノラというより野生猫や野犬もいるらしく、家猫といえどもいったん外に出れば危険いっぱいである。が、子猫が家の回りの畑で走り回っている様子やトンビが上空にくるとサッと身を隠すところを家のなかから観察していると、さすがに産まれた場所のDNAはあるようで危険を察知する能力が高い。
家からは出さないように、と動物病院の小柄な医者から言われたが、そうはいかない。この環境の中で、土砂崩れが起きようが地震がこようが私と生き別れしようが、一匹でも死ぬまで楽しく生きて行けるように育てるつもり。
何の役にも立たないけれど。