朝未き

目が覚めたとき
花は惜しまれて散り ということばが浮かび
時よ停まれ と続く
瞬間は 時間のあいだに織り込まれ
時間のなかからきわだち 現れる
波が引いたあとに 岩

風が吹くと 水の表面にさざなみが立つ
きらめきのかけらが 波間から散る
波が通りすぎると またたきの網がゆれる

灰は春を待たず
水あかるく 月は暗い


しかもかくのごとくなりといへども、花は愛惜にちり、草は棄嫌におふるのみなり。(道元『現成公案』)
時よ停まれ、おまえは美しい! (ゲーテ『ファウスト』)

労働時間は時計で計る。不意に現れ、いつか消える時間の穴は 売り渡せない時。
瞬く光が暗い空間に反射して、おぼろげなかたちが浮かぶ。

身心を擧して色を見取し、身心を擧して聲を聽取するに、したしく會取すれども、かがみに影をやどすがごとくにあらず、水と月とのごとくにあらず。一方を證するときは一方はくらし。(『現成公案』)

声を聞きながら、思いはさまざまに散る。