129 アカバナー(14)人類のげつめいに踊る

うちよせる、貝の国、嶋山の斜面に、かげが一つ消えて、
くまなく、白い砂のはまべはきのうを語る。 ありし岬、
みどり葉のありしあたりの、石油から、燃える腓骨の笛。
無念よ、と予言者の白骨もまた、人類のげつめいに踊る。

墓域のそのさきより、戸をひらき、しんでんに機織りの、
音を聴く。 幽鬼のむすめ、はたを織れ。 石炭紀から、
憑みのつなをかけわたして、それでもまだ帰れというか。
ない明かり、火灯しの婆が独り、人類のげつめいに踊る。

でたらめと、言うなかれ。 どんな野蛮も、予言の前に、
ひれふしてあれ。 潮干のなかを、いわふねがたゆたう。
何がのこる。 予言にんは去る。 嶋山の赭土に溶けて、
滅びしあとからなお焼く野深(ぶか)。 げつめいに踊る。


(滅ぶ時や光景を見ることはできるかもしれないが、滅んだあとを見ることはできない。おまえたちの底知れない退廃のなかに、あらかじめ、光景を望みみるばかりだ。たぶん、また当たるくじだよ。地震はこんご、ありません。火山、これからありません。ただひたすら、おまえがスイッチを消しわすれて帰宅時間を急いだというだけのはなしさ。『現代詩手帖』八月号に戦後70年論を書かせていただきました。それもあるのですが、この特集号がすごい、と思うので、紹介させてください。まず巻頭の一九四五年詩集。20数ページにわたり、平林敏彦さんら編集の50編。もう、わたしゃ神だーりです。それから引き揚げ体験のある詩人、財部さん、飯吉さん、少年兵の平岡さん、新藤さん、また水田さん。沖縄、アイヌでは、私はともかくもとして、高良勉の書評をはさんで、白井明大さんがものすごい。白井さんは3/11以後、沖縄へ移住しました。それから岡和田晃さん、小林坩堝さん。村上陽子さんの新刊『出来事の残響』も紹介します。感心していました、みんな。鶴見さんを送る夏であることをもつよく記憶します。)