アジアのごはん(70)ゴーヤ

4月あたりからパクチーがやたらに食べたくなり、パクチーを見つけては食べまくっていた。暑くなってくると、今度はゴーヤが食べたくなり、ゴーヤを毎食のように食べる日が続いた。パクチーもゴーヤも好物ではあるが、例年こんなに食べまくることはない。パクチーもゴーヤも、おそらく日本で手軽に入手できる食べ物のなかで最強の毒出し力を持つ野菜である。それがこんなに食べたくなるなんて、もしや、今年の春以降、日本の放射能汚染状況はかなり危なくなっているのじゃないか。

たしかに4月後半からフクイチの地下からの蒸気噴出が激しさを増しているし、6月あたりからガイガーカウンターの数値が上がってきているのも確かなのだ。京都の我が家の平均値がそれまで0.08〜0.12マイクロシーベルトだったのが、0.11〜0.16あたりになっている。

使っているガイガーカウンター(ロシア製SOEKS)は、日本製のエアカウンターなどのγ線種しか測らないのとはちがって、β線・γ線核種を測る仕様になっているので、数値はかなり高目に出るが、現実にはより近い値と思われる。もうひとつのα線核種というのは飛距離が短いので、空間線量をはかる計器でとらえるのはむずかしい。空間線量は人体への危険性のひとつの目安でしかない。いまは外部被ばくよりも内部被ばくの方がさしせまった危険だからだ。内部被ばくで最も危険なのがこのα線核種である。

α線核種は、プルトニウムやキュリウム、ラドンである。α線核種の特徴は放射線の飛距離が短いので外部被ばくの危険性は低いが、α線を出す放射性物質を体内に取り込むと、飛距離が短いがゆえに細胞の狭い範囲に放射線を与え続け、内臓や組織への損傷を起こす。特にプルトニウムを吸い込むと、長い間排出されない。肺、そこからリンパ節、血管へと移行して、肺がん、リンパ腫、白血病、骨がんの要因となる。ダメージを与え続けるのだから、がん以外の病気ももちろん起こる。プルトニウムは食べても取り込まれず排出されやすいので、呼吸からの取り込みが問題だ。とにかく放射性毒性は非常に高い。

毎日毎日大量に漏れて、害が少ないからと大量に放出されている汚染水や噴出する水蒸気に高濃度に含まれているトリチウムはどうなのか。トリチウムはβ核種なのに、α線核種のように飛距離が短い。トリチウムは三重水素とも呼ばれる放射性水素である。なので、水、または水蒸気として存在する。なので、除染するのが難しい。ALPSでは除去できない。最近は技術も開発されているようだが、コストがかかるので電力会社としては極力やりたくない。なので、原子力産業の手先のICRPはトリチウムを人体にほとんど影響しないと決めてしまい、それに基づいて日本の(世界中の)電力会社はトリチウムを含んだ冷却水や水蒸気を環境に放出している。

ところがICRPが無害に近いとしたトリチウム水はたしかに10日間で半分は体から出て行くのだが、トリチウム水が体の中で有機分子と結合し、有機結合型トリチウム、というものになってしまうとなかなか出ていかないに上に、トリチウムの多い環境にずっといるとどんどん溜まっていく。しかもそのトリチウムが結合する有機分子というのは神経細胞中のリン脂質、DNA、RNAであることが多く、細胞の中でも最も重要な組織に取り込まれてしまうのだ。それは長い期間、放射線がDNAや染色体タンパクを攻撃し続けるということである。

とくに妊婦や子供への影響は大きく、3.11前からアメリカやカナダでトリチウムによる赤ん坊の奇形や死亡が大きな問題となっていた。トリチウムは外部被ばくはほとんど問題にならないが、トリチウムは水なのでトリチウム濃度の高い環境にいると平衡性によって、人体も同じ濃度になってしまう。原発に近い所に住んでいると、近ければ近いほどトリチウム汚染されていることになる。人間の体だけでなく水分を持つ生物すべてがそうなるので、原発の近くの野菜や魚も汚染されている。

事故があろうとなかろうと、原発の周辺に人は住んではいけないのだった。幸い停止している原発からのトリチウムの放出はゼロではないが非常に低くなる。稼働しているまたはメルトスルーしている原発から放出されるトリチウム水蒸気にはほかの危険な核種もたくさん含まれていると思われ、その点からも再稼働はけっして認めてはいけない。

無害どころか極めて危険なトリチウムなのであったが、今、地下で溶解した燃料が再臨界つまり核爆発を起しているとすると、トリチウムだけでなくさまざまな核種が、そしてMOX燃料にふくまれるプルトニウムも噴出する水蒸気に含まれることになる。セシウムやストロンチウム、プルトニウムなどの核種は放射性pm2.5ともいうべきホットパーティクルという微粒子として水蒸気に乗って空に舞いあがり、福島から旅に出る。

呼吸にも気をつけなくちゃならない。どうやって? まずは事故った原発から出来るだけ離れる。外出にはN95レベルのマスクを着用する。外から帰ったらうがい、手洗い、シャワー。部屋の中ではpm2.5を除去できる高性能空気清浄器をまわす。除湿する。

これ以上体に放射性物質を取り込まないよう食べ物の産地には気をつける。海産物には特に気をつける。免疫力を上げ、乳酸菌のほうふな発酵食品を取る。豆乳ヨーグルトを作って食べる。つとめてパクチーやゴーヤなどの毒出し力の強い野菜を食べる‥などが思いつく。

今年の夏はパクチーとゴーヤを食べて、毒出しに励んでみてはどうだろう。おすすめのゴーヤ料理はゴーヤのポン酢漬けである。3〜4日保存も効くし、おいしいので酒のつまみにもなる。むりに大量に食べる必要はなく、食べたいだけ食べればいい。ゴーヤチャンプルは毎日は食べられないが、これはおいしくて毎日食べてしまう。ほかにもゴーヤ料理をいろいろ工夫してみてはいかが。

ゴーヤのポン酢漬け:ゴーヤ一本を二つに割りワタを取り、2〜3ミリの厚さにスライスする。好みで厚さは加減する。ガラスやほうろうの容器に詰め、飲めるぐらいの酸っぱさと塩辛さに調整したポン酢をかけてひたひたにする。半日〜1日おいて味をなじませる。市販のポン酢を使う場合は、水か乳酸菌液などでうすめて使う。冷蔵庫に保存。つけ汁も一緒に飲んでね。

ゴーヤと豚キムチ炒め:いつもの豚キムチ炒めにネギの代わりにゴーヤのスライスを入れて炒めてみたら、こってりだが、さっぱりのおいしい一品になった。これはいける。

ゴーヤはビタミンC、食物繊維、カルシウム、鉄分が豊富。コレステロール値を下げ、血糖値を下げ、糖尿病に顕著な効果あり。胃酸の分泌を促し食欲増進、体を冷やし、コラーゲンの生成を促し美肌に効果あり。そして共役リノール酸を多く含み、食べ物・花粉・ダニに由来するアレルギー症状を緩和・抑制する。さらに脂質代謝改善作用(太りにくくなる)、動脈硬化抑制作用、免疫増強作用、骨代謝増強作用、そしてきわめつけは抗発がん・抗がん作用である。すばらしい。

共役リノール酸は種に最も多いそうなので、種も綿も食べるのがいいというのだが、ためしにくりぬいた種入りのワタで卵液をまぶして焼いてピカタを作ってみたが、ふ〜んというお味。食べられなくはない。ワタも種も入ったゴーヤの輪切りの天ぷら。うん、まあふつう。種はわかいものは食べやすいが、植えたらすぐ芽が出そうな成熟した固い種は、食べるより、とっておいて来年植えたほうがよさそう。中身を取り出して食べてもいいが。

あれ、そういえばなんだかお肌がむっちりしているような‥。