アジアのごはん(71)ココナツオイルと朝ごはんの行方

ココナツオイルを食べ始めてから、太りだした。とくにお腹まわり。おかしい。ココナツオイルは太らない脂肪じゃなかったのっ。タイにしばらく行っていると、お腹のまわりに着いた脂肪は消える。だが、日本に戻って自分で調理を始め、ココナツオイルを使い始めるとお腹のまわりがあっという間につまめるようになってしまう。

「ヨーグルトを朝食べると太る」というキャッチに惹かれて『最強の食事』(ダイヤモンド社刊、デイブ・アスプリー著)という本を読んでいたら、あっと思い当たることがあった。それはいくら身体によい食べ物であっても食べるタイミング、身体の都合というものがあるということだ。著者によると、まず朝は前日の夕食からの短い断食状態を維持するために、糖分、炭水化物を一切取らないことが重要という。飢えた状態の体は、糖質を吸収するとすぐさま脂肪として蓄えるように指令を出してしまうというのだ。

ココナツオイルをどうやって食べていたのかというと、まずは朝に紅茶を一杯飲み、それからパンを焼いてバージンココナツオイルを塗り、塩を振ってもう一杯の紅茶と頂く。これがまたおいしい~。バターよりも、オリーブオイルよりもおいしい。あとは炒めものや焼き物など調理に使うメインの油として香りのない炭でろ過したタイプのココナツオイルを使う。だいたい1日大匙2杯~ぐらいを食べている。推奨されるココナツオイルの摂取は大匙2~3.5杯だから特に多くはない。

しかし、問題は朝のココナツオイルトーストにあった。じつは、ワタクシはこれまでほとんど朝食を食べない食生活を送ってきた。ときどき朝にパンを食べることもあったが、これほどまでに毎日きっちり、ノルマのように食べたのは、小学生以来ではないか。ココナツオイルをきっちり食べよう、しかもおいしいし。と毎朝お腹がへっていなくても食べていた。その結果がわき腹のお肉か。朝のパンのせいかと考えたこともあった。しかし、わずかのパンとオイルがここまで脂肪になるのか??と信じられなかった。

だが、タイにいる時はアパートにトースターがないし、おいしいパン屋も近くにないので、ほとんど朝は紅茶だけ。ココナツオイルは肌の保護に塗るのがもっぱらだった。タイで痩せるのは大量にトウガラシを食べるせいもあるだろうが。

朝ごはんを食べないというのは、一種の断食でありそれが非常に体に良い結果を生む、と『最強の食事』の著者は言う。夕食後15~18時間の断食がからだの浄化になるのだが、朝起きてすぐに炭水化物や糖分を食べてしまうと、身体は一気に脂肪たくわえモードに入り、ますます空腹を募らせる。たった1枚のトーストがカロリー過多で脂肪に回されたのではなかった。トーストは身体が脂肪たくわえモードに入るスイッチだったのだ。

すると、わたしがこれまでずっと太ったことがなかったのは、朝ごはんを食べない生活習慣のためだったと考えられる。その朝食抜きに関しては、食べると余計に空腹が増す、起きる時間が遅いので朝食を食べると昼ごはんが食べられないからといろいろ理由はあるが、まあ、胃が動かないのでほしくなかったのである。旅行などで朝からしっかり食べさせられると、ものすごく疲れる。うちの連れ合いも同じく朝ごはんを食べないので、うちに朝ごはんはなかった。結果として、15~16時間の短期断食が実行されて、身体は脂肪たくわえモードではなく燃焼モードになっていたのである。

その習慣を、ココナツオイルをちゃんと食べようとして、壊してしまったとは、なんということだ。かつて、さんざん親や友人に朝ごはんを食べろとうるさく言われてきて、わたしの体には合っていないと聞く耳持たなかったのに。

せっかくのココナツオイルも、朝に炭水化物や糖分と合わせて食べると意味がなかった、ということだ。ココナツオイル付きトーストは、昼以降に時々食べるぐらいにしよう‥。というわけで、数日前からふたたび、朝は紅茶だけの生活に戻している。エネルギーが昼まで持たない人は、ココナツオイルをコーヒーに混ぜたり、そのまま大匙2杯ぐらい食べるといいようだ。この脂肪はたくわえに回らず、エネルギーに回されるのでだいじょうぶ、らしい。またはタンパク質とココナツオイルを朝食にするとか。

ちなみにダイエット効果を狙って夜に炭水化物を抜く人が多いようだが、炭水化物は夜に取る方が、身体の負担も軽く、質の良い睡眠がとれる、と『最強の食事』の著者も言っている。まったくの炭水化物ダイエットは糖尿病の人か極度な肥満の人以外には体に害があって一利なしであるので、注意したい。短期的には痩せても、その後に待っているのはさまざまな成人病だ。

かつて、夕食はお酒とつまみだけ、の生活だった頃、朝はいつもひどい気分でふらふらだった。夜にご飯を必ず食べるようにしたら、翌日の状態が一気に改善し、身体の調子がとてもよくなった。お腹がいっぱいになって、お酒やつまみが入らないという人がいるが、ご飯は食べるものとして、のこりのお腹に合わせてお酒とつまみを入れるのがいい。つまり、つまみを減らせばいいのだ。ここで、つまみや酒を減らさずにご飯を追加すれば、それは太るでしょう。

気になるキャッチの「ヨーグルトを朝食べると太る」とはどういうことかというと、腸内細菌はでんぷんや糖質が大好物で、それが与えられると肝臓が作るのと同じ脂肪たくわえ因子を形成し、逆にそれが足りない時には脂肪を燃やすFIAFというたんぱく質を作り出す。朝に腸内細菌の豊富なヨーグルトを食べると、それが火に油を注ぐらしい。著者の身をもっての実験の結果、大変効率よく太ったとのこと。

『最強の食事』はすべて日本人に当てはまるとは思えないが、なかなか面白い本だ。いいとこどりで活用させてもらうとすれば、朝ごはんに炭水化物と糖分、そしてヨーグルトは食べない、というところだ。毒素を排する、という点も重要。著者は牧草で飼育された牛の乳から作るバターとココナツオイルをたくさん食べることを推奨しているが、(それを入れてよく混ぜた「バターコーヒー」が完全無欠な朝食という)牧草で飼育された汚染されていないバターが運よく手に入ったとしても、日本人の多くはこんなに多量のバターは食べられないだろうな。ココナツオイルならまあ、できそう。

いま、TPPへの締結に向けて政府はあたかもすでに「決まった」かのような発言を繰り返し、マスコミも誘導したニュースを流しているが、とんでもない。もしTPPが締結させられると、様々な分野で日本崩壊が起こることになるが、食べ物の分野で言えば、遺伝子組み換え作物のことが大変気になる。これまでJAの子会社が遺伝子組み換え作物の流入を食い止めていた。しかし農協法改正で組合が株式化されてしまうと、外資による買収が可能になるのだ。間違いなく遺伝子組み換え企業のモンサントがJAに入り込んでくる。そうなると、日本の農地は遺伝子組み換え作物に席巻され、それとセットの除草剤ラウンドアップによって汚染され尽くすことになる。

ISD条項によって訴えられる可能性があるために、食品に「遺伝子組み換えでない」という表示ができなくなるだけでなく、じっさいに遺伝子組み換え作物がものすごい勢いで日本の農業を変えていき、輸入作物だけでなく国内産でもほとんどが遺伝子組み換えの野菜や穀物になっていくだろう。

遺伝子組み換え食品の恐さはまだまだ未知数だが、ほぼ遺伝子レベルで害をなすことがわかってきている。さらに、遺伝子組み換え作物と必ずセットで使われるラウンドアップという除草剤は、ダイオキシンを含み、作物に残留する。このダイオキシンが体内に入ると、腸内細菌に大変なダメージを与えてしまうのだ。人の免疫は著しく低下し、さまざまな病気やがんがますます増えることになる。ダブルで始末に悪いのだ。

遺伝子組み換え産業のモンサント社について、日本人はあまりにも無関心すぎる。モンサントをはじめとするアメリカのグローバル資本の利益のために、日本をこれ以上差し出すわけにはいかない。身体によい、毒素を排した最強の食事を望んでも、食卓にあるのは毒ばかり、などという未来は願い下げである。