《にいさんのこさえた人形》
にいさんのこさえた人形
みんな ねえさんのお顔だね
子守歌を歌ってくれたねえさん
にいさんが帰りますように
という歌ばかり
手を引いてくれたのはにいさんとねえさん
わたしが消えれば
にいさんとねえさんの手は
結ばれる
にいさんはかたち
ねえさんはこえ
わたしはことば
《水たまりに》
水たまりににいさんの声
わだちのむこう
虹が途切れて
ねえさんの指の先
さあおい翅(はね)
飛ぶことより
そこにじっと じっと じっと
震える舌のためらい
さんらんの日
ねえさんの微かなしわぶき
にいさんの胸のふるえ
わたしはひかりのつぶを
ひとつ ふたつ みつ よつ いつつと
つぶして つぶして つぶして つぶしながら
歌に返す
歌を孵(かえ)す