山道とウイスキー

朝から夕暮れまで、緩やかな山道を歩く
まとめる必要のない奇妙な考えを巡らせながら

呼吸でもため息でも 聞いているのは自分だけ
いくつかの思惑を どんどん土に落として歩く

休憩所の長椅子に、老人が座っていた
彼はウイスキーを一杯くれた
水を凍らせたペットボトルにウイスキーをつぎ入れ 少し待ったあと
プラスティックのコップに注いでくれる
一口飲んでその美味しさにびっくりする 山道で拾った石の冷たさを思い出した
おじいさんの楽しみは山歩きの休憩にお酒を一杯だけ飲むこと
澄んだ場所にいると、飲むお酒の味もまったく変わるのです、と言う
少しだけ会話をして、ふたたび一人になった

鉛白みたいな空が木々の隙間から見える 冬はすぐそこにいる

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