戦場ヶ原の雪降る夜は 恐ろしいほど神々しく 寒かった
借り物のヘッドライトをつけて 暗い林のなかを進む 時刻は0時近く
電灯もなにもない樹々の奥は いくら目を凝らしても闇しか見えない
眠っている樹木を起こしてはいけないと言っているかのように 静寂が横たわる
風だけが通り抜けることを許されているような
林を抜けると急に視界が開けて 広い農場に出る
まっすぐ伸びる一本道
山の上に浮く月と目が合った 痩せかけた月
月も散らばった星々も 澄んだ空では硬度の高い石みたいだ
世界には星の光だけで歩ける場所があるらしい
明るすぎる本州ではきっと無理だろう
遠くの空が ぼんやり橙色に染まっている
街の光が 秘境といわれる山々の空まで届いている
低く唸る風 山からの声 風に混じる雪
月と星の観察は続く