239 金で買った言葉よ

藤井貞和

言うなかれ どんな野蛮も
予言のまえに
ひれふしてあれ
こがね色の言葉を与えよ
どうせ
金で買った言葉である
使わなきゃ損 只じゃねえ
 
受講生に
小売りの小売り
詩がよい子向けに
なっちゃお仕舞いよ
軽石みてえな
軽い詩はもうたくさんよ
金の使いどころ
 
坊っちゃんが
こんな奴ラは
沢庵石をつけて
海ン底へ沈めちまう方が
日本のためだア
というものだから
重い石を買おうよ
 
言葉よ
きのうは語る
ない火灯し
げつめいに踊る骨
経蔵をひらき
墨を擦って
字にうずくまれ

 
(文法というのは無意識界を明るみに引き出すようなことだから、どこか不快な、嫌われる要素を避けられない。無意識界は明るみに引き出しても、「ああそうですか」で終わる。また無意識界へ帰ってゆくから、無償であることはまちがいない。それに対して言葉一般は意味を持って売り買いできるというようなこと。忘れて。)