昔から眠りが浅い。幼少時は自分はこれから死ななければならない、というような嫌な緊張感にあふれた場面や、殺されそうになって逃げ回る夢をよく見てきた。繰り返す悪夢の正体がなんだったのか突き止めたくて、後にユングの「夢判断」を読んだりした。親の厳しい躾や、学校での規範が合わなくて、子供なりに適応しようと努力したり、やはり我慢できずに抜け出ようとしたり、さんざんもがいた結果だったのだと結論づけた。
中学生くらいになると学校生活や部活動、そして習い事の忙しさのあまり、ばったりと倒れるように寝て朝まで起きなくなったのだが、高校あたりからまた明け方の夢を覚えているようになった。大学生の時もよく眠れないことを医師に相談した覚えがある。医師からは、眠る前にミルクを飲むのをやめた方が良いとアドバイスされた。牛乳に含まれるカルシウムで、心身が落ち着くと長いこと思っていたのだが。最近では夜中にお手洗いに起きる前に一本目の夢を見ていて、明け方に2本目が脳内で上映されている。まだ6月だというのに急激に蒸し暑くなったせいもあるだろう。なかなか眠れずごろんごろんと寝返りを繰り返し、夢ばかりみている。
だが、やっぱりぐっすり眠りたい。朝まで一度もお手洗いに行かずにぐっと深い眠りに落ち、起きたらスッキリ、夢なんて全く覚えていない、というのに憧れる。深い眠りのために、夕方以降は水分を取らないようにしたいところだが、熱中症になったことがあるので水を飲まないわけにはいかない。飲酒も控えてみたのだが、飲んだ時の方が朝まで眠れてしまいガッカリした。
次に試したのは、寝入りばなのシャクティマット(剣山状のトゲトゲがびっしりついたマット)。背中を直接預けて痛みが温かさに変わるまで寝転ぶと、やがて深いリラックス状態を導ける。そのまま眠ってしまいそうになることもしばしばなのだが、寝落ちしかけたその時こそ、一度起き上がってシャクティマットをちゃんと片付けて寝直さねばならないタイミングなのだ。背中の下に敷いたシャクティマットが自動で消える魔法を誰か考えてくれないかなぁ、と切望しながら眠り直す。
そんな日々に満を持して登場したのが、ニトリのNクールという寝具シリーズであった。特殊な冷感素材でできているシーツや敷きパッド、枕カバーなどが売られている。冷たさは三段階、冷、強冷、極冷。店頭で手のひらを当てて3種類を試し、「つめたっ!!」」と思わず声が出たのは極冷。あっさり極冷の敷きパッドと枕カバーをわが家に導入した。これが予想以上によい。触るとあきらかにひんやりしている。しばらく横になって体の接している部分の温度が上がってきたと感じたら、寝返りを打ったり手足の位置を少し動かすだけで、フレッシュな冷たさを愉しめるのだ。布に熱がこもらない工夫がされているらしい。これさえあれば、寝苦しさで夜中に起きることも少なくなるはず。ウキウキしながら眠った。
明け方、ふくらはぎが攣って目が覚めた。
次の日の夜、やっぱりこれがあると涼しいな、と感心しながら眠った。
明け方、ふくらはぎが攣って目が覚めた。
体の熱がよく冷えるのはまことにありがたいのだが、どうやら涼しさのあまり足が冷えすぎてしまうらしい。そんなわけで、今夜は冬のレッグウォーマーをつけて眠るのに挑戦してみようと思っている。暑いに決まっているが、すくなくとも足は攣らないはず。なんだか本末転倒…? ちなみに、世の寝具開発者にお願いしたいことがある。夏のかけぶとんでお腹が冷えないものを作って欲しいのだ。薄くて軽くて涼しい方が良いに決まっているのだが、お腹のところだけは温かくてずっしり重みがあるのがあったらうれしい。足が冷えない工夫と、お腹あたたか夏用掛け布団が揃えば、この夏の睡眠環境は完璧になる予感がする。