今年は三島由紀夫生誕100周年
今生きていれば100歳なんだと
偶然だが市谷で自決したのが11月25日
笠井叡の誕生日も奇しくも11月25日同日
僕が初めて三島由紀夫の本に出会ったのは18歳の時だ
初めてのドイツの一人旅に出る荷物に『春の雪』を持って行った
あまり僕は本を読む人間ではなかったのだが
旅に行くし飛行機の中や電車の中時間はいくらでもある
たまには本を読もうと決意しこの一冊を持って行ったのだ
この旅の最中はいつもポケットに入れてどこにでも持って歩いた
僕は本を読むのがとても遅い方なので
暇があったらページを開き続きを読み進めた
市電に差し込む日差しの中
雨の匂いが残るカフェーの中
酒臭いおじさん達が騒ぐBarの中
草の匂いが心地よい公園の中
主人公の松枝清顕と自分を重ねてみたりした
主人公の松枝清顕も僕と同じ年の18歳ではじまる
あの時吸った空気は文章と共にカラダの景色に変わった
その体験は今考えてもとても大きな意味を持っている
それから数年後ダンスというものに出会う
自分の初めてのソロリサイタルに決めたタイトルが『春の雪』
次の日に降った大雪の景色が熱をもったカラダ冷やしてくれた
僕のダンスは三島の小説で始まった
今もきっと僕は小説の中に入ったままなのだ
きっとここから抜け出すことはないのだと思う
もう僕も三島由紀夫が自決した45歳を越えてしまった
どのような思いでそのような行動をしたのか
きっと本当の事は本人にしか分からない
今生きていればどのようにこの世界を見ていたのだろう
自決から55年の2025年11月25日
僕は父笠井叡と妻の上村なおかの三人で
生前三島由紀夫とも交流のあった澁澤龍彦邸で
新しい作品を踊った『三島由紀夫を踊る』
そこには数名の関係者が立ち会ってくれました
その中に僕の古い友人でもある土方巽の娘のガラちゃんも
久しぶりに駆けつけてくれた
三島由紀夫と澁澤龍彦と土方巽
三人の昔話が色々交差する中
今日ここで踊った事で
僕の中の三島由紀夫の新しいページをめくる事ができた
そして3年後が澁澤龍彦と土方巽の生誕100周年
未来はきっと明るいと信じたい
新しい世界はどんどん広がっていく
三島由紀夫生誕100周年
きっと三島由紀夫が作ろうとした
新しい神話がここから生まれるだろう