チャボ、渋谷陽一に歌う

若松恵子

2025年の年の瀬に、チャボ(仲井戸麗市)が渋谷陽一を思って、彼のために歌うのを聴いた。7月に亡くなった渋谷陽一を追悼して、12月13日にNHKラジオの特別番組「今日は1日渋谷陽一三昧」が放送された。チャボは生放送にゲスト出演して渋谷陽一との思い出を語り、スタジオでギターを弾きながらひとりで歌った。映画「アラモ」のテーマ曲に使われていた「The Green Leaves of Summer」にチャボの日本語詞をつけたものだ。君と出会った日々、それは若葉の頃、そのひとつひとつに感謝をと歌い、そして、嫌いさ2025年夏、君を連れ去った夏と続く。気取った言葉ではなく、凝った表現でもなく、素直な心情が歌われている、その思いの深さに胸を打たれた。

渋谷陽一の印象を「生意気なヤツでした」とコメントしていたチンピラみたいな語り口も相変わらずかっこよかったのだけれど、スタジオで歌うのを聞いて、ミュージシャンとして渋谷陽一のためにできる最上の事は、やはり音楽を奏でることではないかと考えたチャボに凄いと思った。何人かのミュージシャンがゲスト出演していたけれど、歌っちゃうなんて自由に振舞った人は彼ひとりだった。

渋谷陽一が作ってきた年末の音楽フェス、カウントダウンジャパンに久しぶりに出演した12月31日のステージでもこの曲は演奏された。「知ってるバンドがひとつもない、キンクスはどうした、ストーンズはどうしたんだ」と笑いながらステージで話していたけれど、エレキ1本で歌う彼を初めて見て、心動かされる若い人たちがたくさんいたら良いなと思った。公式ホームページに出たライブレポートのそばに、関連記事として渋谷陽一のブログ「社長はつらいよ」のリンクが貼ってあった。2009年、忌野清志郎が亡くなった年に渋谷陽一がチャボについて書いた記事だ。ブログはいつかどこかに消え去ってしまうから、書き留めておきたいと思う。どの1行も削れない文章なので全文引用する。

チャボ、RCを歌う (渋谷陽一「社長はつらいよ」2009年10月12日)
清志郎が亡くなった後に起きた追悼センチメンタリズムの洪水、それに誰より戸惑ったのはチャボではないだろうか。できればそうしたものから距離を置きたかっただろう。
若い頃の彼ならそうしていたかもしれない。しかしチャボはそうしなかった。清志郎の「せめてチャボがそこに居てくれなくては俺は浮かばれないぜ」という声が聞こえたからだ。
そして、その声を引き受けなければならないという覚悟を持てるくらい大人になったのである。毎年恒例のAXのライブ。その年の動きを映し出す企画でやっているライブだ。
今年、チャボはそれをRCを歌うという企画にした。3時間半近いライブだったが、そこでチャボはRCを歌い清志郎の思い出を語った。その会場に居た人間は誰もが、とてもかけがえない時間が流れている事を感じていたはずだ。
今年、チャボはとても厳しい時間を過ごした。冗談じゃないよ、と思うことも多かったはずだ。でも、その時間はチャボを強くした。昨日のライブを観て、そう思った。こんな事を書くとチャボから、そんなもんじゃないんだ、と怒られそうだが、本当にそう思った。とても難しいライブだったはずだ。観ていてつらかったらどうしよう、とも思った。しかし全くそんな心配はいらなかった。素晴らしいライブだった。
今年、チャボはカウントダウンに参加してくれる。誘った時、断られるかと思ったけど引き受けてくれた。その時も何か覚悟のようなものを感じた。
イノセントな思いを持ったたくさんの参加者に彼のステージを体験してもらいたい。